グローバル化によって世界の隅々まで情報が行き渡り、人や物が行き交う時代になった。それに伴い、これまでニュースの表舞台に出て来なかった国、地域、民族の名前がクローズアップされている。グローバル社会で生きる日本は、外交戦略においても民間企業のビジネスにおいても、こうした知られざる「ニューフロンティア」への知見を深めることが必要だ。この連載では、注目すべき国や地域を毎回ピックアップし、内政、外交、国際関係をはじめとする「ニューフロンティア」を読み解くためのポイントを、詳しくお伝えする。
米国が無視できないマイノリティの台頭
とりわけ存在感を強める「アジア系移民」
連載第1回は、米国で大きな発言力を持つようになったアジア系移民の“知られざる輪郭”を浮き彫りにしよう。実は、アメリカ社会における日系と中国系・韓国系のパワーバランスは、大きく変わりつつある。その兆候は、今後日米両国の外交にも影響を与えるかもしれない。
米国は移民社会と言われるが、近年の人口構成の変化が米国の政治に与える影響は多大である。たとえば、昨年11月のアメリカ大統領・連邦議会選挙は、マイノリティの台頭、中でもヒスパニックの存在が大きな決定要因であったと言われている。
人口増加が目覚ましいアジア系も、アメリカ社会で大きな存在感を示すようになってきている。特に、中国系、韓国系は政治への発言力を強めている。
一方で、日系は社会への同化が進み、アイデンティティが希薄化している。このようなアジア系人口の増加の趨勢は、米国の対外政策にも微妙な影響を与え始めている。
アジア系は過去10年に人口増加のスピードでヒスパニックを凌駕した。2010年の国政調査によると、今世紀に入ってからのアジア系の増加率は約46%で、人口に占める割合は約6%の17.3万人に達した。内訳は、中国系が約23%、フィリピン系が約20%、インド系が18%、ベトナムが約10%、韓国系が約10%、日系が約7.5%となっている。