ロシア新興財閥の凍結資産、納税者には「悪夢」アンティグア島南部のファルマス・ハーバーに停泊中の豪華ヨット「アルファ・ネロ」 JOSEPH JONES FOR THE WALL STREET JOURNAL

【ファルマス・ハーバー(アンティグア・バーブーダ)】昨年の早朝、この港を囲むように二十数人の武装警官と5人の米連邦捜査局(FBI)捜査官が配置された。全長約82メートルの豪華ヨット「アルファ・ネロ」に強制捜査に入るためだった。このヨットはロシアの新興財閥(オリガルヒ)アンドレイ・グリゴリエビッチ・グリエフ氏が所有者とみられている。化学肥料業界の大物実業家で、ウラジーミル・プーチン大統領とのつながりを理由に米国の制裁を受けている人物だ。

 以後、1億2000万ドル(約180億円)のこのヨット――サッカー競技場ほどの長さがあり、ダンスフロアに転用可能なインフィニティープールを備えている――はカリブ海の島国アンティグア・バーブーダのアンティグア島に位置する穏やかな港に停泊し続けている。そこに浮かんでいるだけで、西側諸国がロシアに仕掛けた経済戦争や押収された数十億ドル相当のロシア資産の管理と売却の難しさを思い起こさせる。それと同時に人口9万3000人の小国にとっては「悪夢」となりつつある。