国に対して対決姿勢を
あらわにした教団の事情

――文科省が7回にわたり質問権を行使しましたが「適切な回答が得られなかった」ということで、政府は10月にも旧統一教会に対して解散命令を請求する考えです。今後、旧統一教会はどうなっていくと思われますか?

 旧統一教会側は9月8日に、国に対して反論の会見を開きました。完全に対決姿勢をあらわにしたという印象です。これは教団にとっては悪手だったと思います。国は解散命令を出しやすくなりました。しかし、だから10月中旬に解散請求の命令が本当に出るかといったら、そこはまだ分かりません。

 ここで旧統一教会に対して解散命令が出ると「次は自分たちなのではないか」と恐れる宗教団体や、それを票田とする政治家たちがいます。解散命令が出されたとしても、財産保全の規定がないので、特別措置法を制定すべきであるという議論がありますが、与党がまだ乗ってきません。他の宗教団体の顔色をうかがっているのだと思います。

 解散請求を止めようとする動きは、いろんなところにあるのですが、岸田さんが必死に進めているところなので、この件に関しては「岸田ガンバレ」という気持ちで見ています。

 教団は今追い詰められています。コロナ禍で、日本の信者が韓国に行けない時期があり、さらに、安倍元首相の銃撃事件があり、日本から韓国にカネを送ることができていない状況が続きました。安倍元首相の銃撃事件の直後は、日本の教団におよそ1000億円のプールがあったともいわれるのですが、これをなかなか韓国に送ることができなかったそうです。

 韓国では、旧統一教会の持っている財団が資金を補填しながら自転車操業的にやっているのですが、お金が回らないので、旧統一教会が韓国に持っている優良な不動産を売り始めています。

書影『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)
鈴木エイト 著

 また、Y22という日本でいうところの霞が関のような所に、教団が地上権を持っていて、そこに超高層ビルが立っているのですが、この地上権を巡って韓鶴子派と三男派が闘っていましたが、結果的に、韓鶴子派が敗訴しました。

 加えて、三男派はアメリカでUCIという教団の資産管理団体を持っているのですが、このUCIの所有権を巡る裁判でも三男派に負けたことによって、総額で、およそ1000億円の賠償義務が韓鶴子派に発生しています。相当な金欠状態ですが、頼みの収入源である日本からはお金が入ってこない。その上、日本で解散命令請求が進められているということは、教団にとっては壊滅的な状況です。

 教団ナンバー2だった尹鍈鎬(ユン・ヨンホ)氏が失脚し、韓鶴子はラスベガスで豪遊していたスキャンダルが暴かれて、信者の引き留めにも必死になっています。こうしたことが、解散命令請求に対する、教団のあの威圧的な会見につながったのだと思います。