企業の不正に関するニュースが後を絶ちません。中古車販売大手ビッグモーターによる数々の問題は、「成果至上主義の企業体質が招いた」とも。人はなぜ悪事を働いてしまうのでしょうか? 筆者は、「悪事は、必ずしも悪い人ばかりが働くわけではない」といいます。(作家 和田裕美)
相次ぐ組織の不正、問われる私たちの倫理観
中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求や、街路樹の無断撤去が明らかになりました。「成果至上主義の企業体質が招いた」ともいえる不正に、世の中が大きくざわついています。
他にも、ペットショップ大手Coo&RIKU(クーアンドリク)では、購入者との契約トラブルが多発し、飼育環境が劣悪であったことも話題になりました。犬を適切に管理することよりも、とにかく売り上げを優先せよと指示があったなどと指摘されています。
普通に考えれば、いずれも「倫理的にやってはいけないこと」だと分かります。けれど、そこで働いている人にしか分からない苦悩、違和感や疑問を告発すれば仕事を失うかもしれないといった不安や葛藤があったことでしょう。
また、ビッグモーターの場合、店長クラスで1000万円、成績が優秀な人は4000万円もの営業コミッションがあったと聞きます。多額の報酬を優先してしまう人間心理も分からなくもありません。
もちろん、動物の命を粗末に扱ったり、自己の利益のために不正をしたり、誰かをおとしめる行為は絶対に許されるものではなく、それらを肯定する気は一切ありません。ただ、不正に手を染めてしまう人、その全てが悪人だとも言い切れないと思うのです。
「倫理的に正しくないことをする人は、もともと悪い人だった」と考えがちですが、そんなことはないでしょう。悪事は、必ずしも悪い人ばかりが働くわけではありません。クーアンドリクでいえば、もともとは動物が大好きで入社した人が多いはずです(その後、現実を知って辞めた人も多いでしょう)。