1月にアルジェリアで発生した人質事件では、政情が不安定な地域における企業活動の難しさが浮き彫りになった。一方、海外の日系企業がセキュリティ会社に現地での安全の確保を依頼するケースも珍しくない。「民間軍事会社」とも呼ばれるセキュリティ会社とはどういったものなのか?そして、その将来像とは?(取材・文/ジャーナリスト 仲野博文)

アルジェリア人質事件で安倍総理が
“企業戦士”と呼んでくれたことに心が震えた

なかの・ひろふみ
甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。

「アルジェリアの事件で、安倍政権が邦人退避のために初めて政府専用機を使ってくれたことに感謝している。今までは政情が不安定な国から邦人が退避する際、政府専用機に政府関係者以外の邦人が搭乗させてもらえることはなかった。海外にいる法人の命をどう考えているのかと、これまでは憤っていたが、政府の今回の決断には拍手を送りたい。また、安倍総理が海外で様々な事業に携わる邦人を企業戦士と呼んでくれたことに心が震えた」

 アルジェリアで10人の日本人が犠牲になった人質事件が発生してから1ヵ月が過ぎた2月中旬、世界各地でインフラ事業に携わる日系コンサルタント会社の代表は筆者にそう語ってくれた。

 アルジェリア人質事件について、ここで簡単に振り返っておこう。1月16日、アルカイダ系組織の司令官モフタール・ベルモフタールに率いられたと見られるアラブ系の武装集団が、アルジェリア東部イナメナスにある天然ガス施設を急襲。約30人のテロリストで組織された犯行グループは外国人スタッフらを乗せたバスが施設内の居住区域から外に出た直後を狙い、そのまま居住区域を占拠した。施設内にいた800人以上が人質となってしまい、アルジェリア国内の報道によれば、そのうちの132人が外国人だったとされる。

 事件発生後、アルジェリア軍は施設周辺を包囲。翌日の17日からは、ヘリコプターによる犯行グループへの攻撃もスタートした。アルジェリア軍によるテロリスト壊滅作戦は19日まで続き、最後は犯行グループが人質を巻き添えに自爆を決行。4日間でテロリストを含む70人近くが死亡する大惨事となった。