日本は少しずつ、確実に貧しくなっています。それでも平成の時代は昭和の遺産を食いつぶすように生きながらえることが出来ました。しかし、令和の時代はますます厳しさが増していくことは間違いありません。今はコロナのことで皆さん頭がいっぱいになっていますが、この危機が去った時にどんな経済状況が待っているのか。それを考えるとゾッとします。
 日本人の貧困化を食い止めるにはどんな方法があるのか?
 その一つは、一人ひとりが「投資家の思想」を持つことだと思います。これまで多くの日本人は「労働者の思想」しか持っていませんでした。しかしその思想では、もう未来がないのです。
「投資家の思想」こそが日本の未来を切り開くと私は信じています。少なくとも、その思想を持てた人は、生き残ることが出来ます。
 投資をすることがビジネスパーソンとしていかに大事であるかということを知っていただきたいと思い、私は『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)という本を書きました。ここで言う投資とは、チャートとにらめっこして売り買いを繰り返すことではありません。それは「投資」ではなく「投機」です。ギャンブルとなんら変わりありません。私が言う「投資」とは、もっと大局的でビジネスの本質に関わるものです。

【カリスマ投資家の教え】国際分散投資という的外れな考えPhoto: Adobe Stock

一国の成長とその国に上場している企業が生み出す利益は必ずしも連動しない

【カリスマ投資家の教え】国際分散投資という的外れな考え奥野一成(おくの・かずしげ)      農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。 京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)など

 資産運用には「国際分散投資」という考え方があります。日本だけでなく米国、中国、アセアン諸国、欧州、中東というように、世界中の株式に分散投資した方がリスクは低くなるのと同時に、アセアンなど新興国の成長を取りに行けるという考え方です。  

 この考え方は全く見当違いです。特定の国・地域が成長するから株価も上がるというのは、はっきり言って幻想です。一国の成長とその国に上場している企業が生み出す利益は、必ずしも連動しません。 たとえばアジア経済がまだまだ伸びるとしましょう。その時、最も大きな利益を得られるのは、アジアの地場企業でしょうか。違います。

 アジアの成長を最も享受できる企業の一つの例としては米国のウォルト・ディズニーが挙げられます。現在、アジアでは東京、上海、香港の3か所にディズニーランドを展開していますが、魅力的で集客力のあるテーマパーク運営において、ウォルト・ディズニーを超えられる会社はないでしょう。当然、アジアの一企業がこのジャンルでウォルト・ディズニーの向こうを張ろうとしても、尻尾を巻いて逃げることになるのは目に見えています。

 つまり大事なことは、企業がたたき出す利益なのです。そして、その利益をサポートする参入障壁の存在です。そういう会社に複数投資した結果として、いくつかの国に分散投資されているということはありますが、それは単なる結果です。最初から国際分散投資ありきという考え方は、根本的に間違っているのです。

※本稿は『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)から一部抜粋・編集したものです