新しい技術が生まれると99%の人は良いことに使い
1%の人は不適切な理由で使う

ショーン 新しいテクノロジーに懸念がつきまとうのは、どの時代でも同じです。どのような新しい技術革新であっても、世界の99%はそれを良いことに使い、1%は残念ながら不適切な理由で使うということが、これまで繰り返されてきました。

 私たちは、AIを不適切に使用することがないよう、Global Partnership on AI(※1)や、Responsible AI Institute(※2)といった団体にボランティアとして参加しています。
※1  GPAI/AIに関するグローバル・パートナーシップ。人間中心の考え方に立ち、「責任あるAI」の開発・利用を実現するために設立された官民国際連携組織
※2 組織における責任あるAIの取り組みを成功に導くことを目的とした、グローバルかつメンバー主導の非営利団体

 こうした倫理的なフレームワークや、人々のデータとプライバシーが、つねに保護されるような政策や管理体制の整備を支援する活動に、リーダーシップを持って積極的に関わることは、私たちの企業文化にとって非常に重要なことです。

モハンさんと後藤さん

モハン 車にはブレーキが付いていますよね。ブレーキがあることで、より速く安全に走ることができる。同様に、AIにもコントロールが必要です。

 特に、エッジAI(AIをデバイスに直接搭載し、そのデバイスで処理を行うような形のAI)を使用する場合や、責任のあるAIシステムを構築するために、私たちは、今、ショーンがお話したような外部のフレームワークを活用しますし、AIポリシーを設定し、AIをコントロールするための制御システムを使います。

 そうしたシステムを使うことで、AIのパワーを最大限に引き出すと同時に、スカイハイブのシステムを確実にコントロールしているのです。

――本日はSkyHive Technologies日本代表の後藤宗明さんにもおいで頂いています。後藤さんは早くからリスキリングの必要性を訴えてこられ、2021年に日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立しています。そして2022年にスカイハイブの日本代表に就任しました。どのような経緯だったのでしょうか?

後藤氏後藤宗明(ごとう・むねあき)
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事/SkyHive Technologies 日本代表。石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所客員研究員を歴任。政府・自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、SkyHive Technologies 日本代表に就任。著書に『リスキリング』『リスキリング【実践編】』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)がある

後藤宗明(以下、後藤) 私自身は40代の時に、海外のAIやテクノロジーの国際会議などの現場に飛び込み、今後はテクノロジーの進展による失業(※しばしば「技術的失業」と表現される)が社会課題になると考えて、その解決策をアメリカの識者に聞いて回っていました。

 2017年、シンギュラリティ・ユニバーシティという研究機関のグローバルサミットで、スカイハイブが紹介され、同社が技術的失業に対する最大の解決策として、AIを活用したプラットフォームでリスキリングを提供していることを知りました。

 何としても日本でこの事業を展開してもらいたいと思い、ショーンさんに働きかけながら、リスキリングを日本に定着させる活動をしていたところ、念願かなってスカイハイブに関わり始め、2022年の4月から日本代表として、日本での展開を担っています。

――日本では2023年の4月にベネッセ(ベネッセホールディングス)がスカイハイブと資本業務提携を結び、1000万ドル(約13億円)を出資しました。ベネッセとの提携のきっかけを教えてください。

後藤 2000年代の後半、私は社会起業家を支援する仕事をしていたのですが、そのときに、ベネッセの社会人教育事業本部本部長であり、(オンライン教育プラットフォーム)Udemyの日本事業責任者でもある飯田智紀さん(関連記事:「リスキリングとリカレントの違いは?」)とお会いする機会がありました。

 社会をより良くしていくために教育が大事だ、という話で意気投合しました。2022年、スカイハイブの日本代表に就任した後、スカイハイブとベネッセの今後の方向性やビジョンが一致することが明確になり、補完し合える関係になれるだろうということで、今回の業務提携に至りました。

――ショーンさんは、ベネッセとの提携はどのようなメリットがあると考えていますか?

ショーン ベネッセは教育事業を主体とした、歴史ある企業で、独自の顧客層を持ち、多くの学習者を擁しています。Udemyとの提携で、テクノロジーを通じたリスキリングにも力を入れています。

 先ほどの、運転手、車、GPS(地図)の例えで言うと、GPSが私たちスカイハイブです。すでに多くの運転手(学習者)と車(学習サイクル)を擁するベネッセと私たちが協業することは、完璧なマッチングになると考えています。

――今後の日本での展開を楽しみにしています。ありがとうございました。

3名