おふたりPhoto by Teppei Hori

少子高齢化、中間層の減少、デジタル技術の進展、とりわけ生成AIの台頭で、ビジネスパーソンにとってリスキリングはますます重要な課題となっている。スキル、仕事、トレーニングなど世界最大級の労働市場情報のデータベースと、「量子労働分析プラットフォーム」など独自のAI技術を活用したデータ分析に強みを持つ、カナダ発のグローバル人材情報ソフトウエア企業・SkyHive Technologies Holdings Inc.(スカイハイブ テクノロジーズ ホールディングス、本社:米国デラウェア)の共同創立者、CEOのショーン氏とCTOのモハン氏が来日。同社設立の理由や、リスキリングをいかに可能にするか、AIと労働市場の関係や倫理の問題などを聞いた。(インタビュー・編集/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光、文・構成/奥田由意、写真/堀哲平)

「起業家になろうなどとはまったく考えていなかった」
AIを活用したグローバル人材情報企業を起業した理由

――SkyHive Technologies Holdings Inc.(以下:スカイハイブ)はどのような目的で設立されたのでしょうか。

Sean Hinton(以下ショーン) 答えはとてもシンプルです。「世界をリスキルする」ためにスカイハイブは設立されました。

ショーン氏Sean Hinton
SkyHive Technologies Holdings Inc. 創業者兼CEO。労働経済分野のコンサルティング、世界23カ所に拠点を持つ2億5000万ドル規模のグローバル企業のCEOを経験したのち、2017年、SkyHiveを創業。カナダ政府の招聘により「人工知能に関するグローバルパートナーシップ(GPAI)」カナダ代表として参加。経済理論と人工知能を結びつけ、仕事、スキル、トレーニング、労働市場に関する世界最先端のリアルタイムナレッジグラフを作成するQuantum Labor Analysisを発明。カナダ・アメリカビジネス評議会(CABC)の起業家サークルの共同議長であり、OECDのFuture of Workフォーラムのエンゲージメントグループのメンバーも務める

――ショーンさんが、あるシリアの女性の話を聞いたことが設立のきっかけになったと伺いました。

ショーン 2016年、ドバイで世界のビジネスリーダーのネットワーク、Young Presidents' Organization(YPO)の会議に参加する機会がありました。その時は私はある会社の雇われCEOで、会社も成長し、仕事にも完全に満足していました。

 そのYPOのあるセッションで、レバノンの難民キャンプで暮らしているというシリアの女性のお話を聞きました。内戦で家族を失い、病に苦しみ、子どもをさらわれ、拷問されてきた。そのあまりに悲惨な話に私は衝撃を受け、セッションが終わるなり、何か行動しなければと思ったのです。

 でも私は、紛争解決や難民問題を解決するためのスキルや経験があるわけではありません。ただ、私は労働経済学者であり、CEOというリーダー経験がありました。そこで、人々に希望と尊厳を与える仕組みをつくれないだろうかと考えました。

 人々が自分の能力をよりよく理解し、キャリアや機会をコントロールすることで、皆で明るい未来をつくっていける、皆が明るい未来を手に入れられる、そこで私の能力が貢献できるかもしれないと思ったのです。そこからスカイハイブが始まりました。

 その時まで私は、起業家になろうなどとはまったく考えていませんでした。そもそも、2016年時点には誰も「リスキル」の話などしていなかったのです。ここにいるモハンは、シリコンバレーにいる共通の友人を通じて知り合いました。世界屈指のエンジニアであり、一緒にスカイハイブのシステムを構築しています。

――モハンさんは、エンジニアとして各国の労働市場を見てきて、日本と欧米諸国の労働市場に違いは感じられますか?