進化を続けている
前立腺がんの手術法

 従来から前立腺を切除する術法としては、尿道から内視鏡を挿入して電気メスで削る手術が行われてきました。最近ではレーザーを使って切除する手術なども広く行われています。

「2022年の4月から医療保険が適用となった最新の手術法としては、前立腺吊り上げ術というものもあります。これは尿道の内側に針状になっている鋲(びょう)を打って前立腺肥大で狭くなった部分を広げる手術で、排尿を楽にすることができます」

 これとは別に、がんに対する前立腺摘除手術の方法としては、ロボット支援手術という術法もあります。知名先生は、このロボット支援手術が専門分野です。

「アメリカで1990年代に開発された前立腺手術の支援ロボットがダヴィンチです。日本ではhinotoriという支援ロボットも開発されています。これらのロボットを使えば、ロボットアームを動かして手術をすることができます。従来の鉗子(かんし)を操作するよりもはるかに自由に動かすことができるので的確に手術を行うことができ、患者さんの負担も軽く済みます」

 ロボット支援が現代医学における前立腺摘除手術の最先端だというわけではありません。さらに術法は進化を続けています。

「新しい手術法が開発されて、2023年からは実用化の段階を迎えています。これは、あらかじめエコーでどこまで前立腺を削ればよいかを調べてプログラミングを行い、内視鏡に備えられたウォータージェットの水圧の力で自動的に前立腺を切除するという方法です。設備が整っている病院はごく限られているのですが、短時間で確実に手術が行える方法として注目されています」

 男性であれば誰でも発症し得る前立腺肥大症。投薬や手術による切除という方法はありますが、発症した場合は、定期的に診察を受けて薬を処方してもらうだけでなく、泌尿器科専門医による指導のもとで日常生活の習慣を見直すことも有効です。

 それが面倒だと感じる方も多いでしょう。しかし、前立腺がんという恐ろしい病気に罹患している可能性もあるので、夜中にトイレのために2回以上起きてしまう、尿の出具合が悪くなった、尿意を我慢できなくなったといった症状がある場合には、必ず泌尿器科で診断を受けるようにしましょう。

(監修/知名俊幸 順天堂大学医学部附属順天堂医院 泌尿器科)