勃起不全(ED)の重症度と心血管疾患死は関連する──こんな研究結果がオーストラリアから報告された。

 調査では45歳以上の男性9万5038人を追跡(平均年齢は62.0歳)。対象者は郵送アンケートでEDの有無とその程度を自己申告した。自己申告によれば、45~54歳の2.2%、55~64歳の6.8%、65~74歳の20.2%、75~84歳の半数が重症のEDに悩んでいる。ちなみに85歳以上は75.4%だとか。御年85歳にしてEDを嘆く状況があるなんてうらやましくも寿(ことほ)ぐことだろう。

 それはさておき。追跡データを分析した結果、自己申告で「重症ED」と回答した人は「NO‐ED」とした人よりも心血管疾患で入院するリスクが35%も高いことが判明。全死因による死亡リスクは93%上昇した。さらに心疾患の既往歴がある場合は、心血管疾患での入院リスクが64%、全死亡リスクは何と137%に激増したのである。

 EDと心血管疾患との関係は以前から指摘されてきた。米国の世界的疫学研究「フラミンガム・スタディ」でも、ED男性の心血管疾患リスクはNO‐ED男性より40%高いと報告されている。当時の研究者は「(冠動脈など)太い動脈の血流が滞るのだ。ペニスに血液がいかなくても当然」と素っ気なく結論。患者本人にすれば踏んだり蹴ったりだが。

 EDというと心理的側面が強調されがちだ。しかし実際には心血管疾患を引き起こす高血圧や肥満、糖尿病が原因であるケースが多い。国内の診療ガイドラインにも「EDをみたら心血管系疾患の合併を疑え」とあるくらいだ。EDにお悩みの諸氏は「心血管疾患の発症を予防する機会」と割り切って、健康管理に専念しよう。健康的な生活を実践するにつれ、一石二鳥で“復活”もあり得るのだから。

 最後に今回の調査にも使われたEDの重症度に関する質問を一つ。「性交に十分な勃起を得ることができて、維持することもできますか」──「毎回できる」「たいてい」「時々」「毎回できない」。回答次第では医師に相談することをお勧めする。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド