うそがバレなくても
違和感を残す恐れ
うその多くがバレないとはいえ、「だったら、うそを積極的について相手を出し抜こう」と考えるのはやめたほうがよいでしょう。
うそのサインの中に微表情というものがあります。感情を抑制しても抑制し切れず、顔の一部に微細な動きとして表れる表情です。0.5秒ほどしか表れないため、訓練されていない目では捉えることはできません。しかし、意識的に微表情に反応できなくても、生体反応(皮膚コンダクタンス:発汗反応)は反応し、微表情を生じさせている人物の印象形成に影響を及ぼすことがわかっています(Svetievaら, 2016)。
うそをつく→微表情が生じる→相手に微表情はわからない→相手にうそはバレない。しかし、相手に違和感を残す、ということになり得るのです。
また、私たちが、「本当に悲しんでいる人」と「うそ泣きをしている人」の表情を見るとき、意識的に両者を区別することは難しいものの、本当に悲しんでいる人に比べ、うそ泣きの人に、共感しないことがわかっています(Gundersonら、2023)。
うそは短期的な利益をもたらすかもしれませんが、長期的には、その人の信頼と誠実さを損なう可能性があります。正直なコミュニケーションこそが深い人間関係を築くための鍵なのです。
DePaulo, B. M., Lindsay, J. J., Malone, B. E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychological Bulletin, 129(1), 74-118. https://doi.org/10.1037/0033-2909.129.1.74
Gunderson, C. A., Baker, A., Pence, A. D., & ten Brinke, L. (2023). Interpersonal consequences of deceptive expressions of sadness. Personality and Social Psychology Bulletin, 49(1), 97-109. https://doi.org/10.1177/01461672211059700
Svetieva, Elena and Frank, Mark Gregory, Seeing the Unseen: Evidence for Indirect Recognition of Brief, Concealed Emotion (December 7, 2016). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2882197 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2882197
The Global Deception Research Team. (2006). A World of Lies. Journal of Cross-Cultural Psychology, 37(1), 60-74. https://doi.org/10.1177/0022022105282295
(株式会社空気を読むを科学する研究所 代表取締役、防衛省研修講師 清水建二)