インバウンドはいいけれど……。

 円安による内外価格差が続く限り、インバウンド頼みの経済成長を追求すれば、「安いニッポン」「貧しい国ニッポン」と裏表の関係だ。

移民の議論なし。もう日本に労働者は来ない

 こんな「安いニッポン」に、果たして外国人労働者は今後もやってくるのだろうか。ネックは上がらない賃金だ。

 日本の経済成長を阻む要因には、アベノミクスの失敗など政府の経済政策のマズさ以前に、少子高齢化で労働力不足という構造的問題が立ちはだかる。

 それを補うため、安倍政権は2018年秋の臨時国会でバタバタと出入国管理法を改正し、翌年4月にスピード施行した。「特定技能(1号、2号)」と呼ばれる2つの在留資格を新設して14業種で外国人労働者の受け入れを拡大し、従来認めていなかった単純労働も合法化するものだった。

 ここでより明確になったのは、1993年から導入されている「外国人技能実習制度」の破綻だ。

 途上国への「国際貢献」の名の下に、外国人を日本人以下の低賃金で「労働力」として使ってきたことはもはや否定しようがない。劣悪な労働環境、イジメや暴力に耐えかねて、実習先から失踪する実習生が続出していることも広く知られるようになった。

 コロナの水際対策が解除され、23年5月に政府の有識者会議が技能実習制度を廃止し、「人材確保」を目的に加えた新制度創設を提案する中間報告をまとめた。批判された制度をようやく廃止する方向に舵を切ったのは、人手不足の尻に火がついているからで、日本側の勝手な事情だ。外国人労働者の人権侵害の問題は今も解消していない。そのうえ、日本の賃金は韓国やシンガポールより安い。出稼ぎ目的なら、わざわざ日本を選ぶだろうか。