もう一つは、本人が中身を語ることができないまま、キャッチフレーズを振り回して、中身を考えるための有識者会議を作った「新しい資本主義」を巡るぐずぐず具合だ。この様子を見て筆者は、岸田氏が自分でものを考えていない人物であることを確信した。

 それを「いい」とおだてる側近のレベルも低いのだろうが、「聞く力」「異次元の少子化対策」など、中身のない見出しの言葉を発して得意になる様も見苦しい。今回の「減税」へのこだわりも、何ともくだらない。

誰かが倒閣を始めたらいい
自民党は政治的活力を取り戻せ

 全くその器ではない岸田氏が首相にとどまっている理由は、野党に全くパワーがないことの他に、自由民主党内でのけん制の均衡が出来上がっているからだろう。誰かが、「岸田氏に総裁・首相は任せられない。私が総裁になる」と手を挙げた瞬間に、ライバルたちがつぶしに来ると期待されるような、抑止力が働いている。

 しかし、このつまらない均衡は崩すことができるはずだ。

 例えば、今回の減税案は政策としてダメなことが誰の目にもはっきりしている。閣僚の中にも、「ばかばかしい」と思う人物は少なくあるまい。閣議決定の際に批判を唱えて、閣僚を辞任してしまうといい。国民は大いに支持するだろう。

 そこで、閣僚からも閣僚以外からも、もう2~3人が批判の声を上げたら、政局は一気に流動化するのではないか。岸田内閣の退陣と、自民党総裁選挙の前倒しを求める声が大きくなることが期待できるのではないだろうか。

 第2次安倍政権があまりに無風であったせいか、自民党内の政治的活力がひどく低下している。しかし、岸田政権を長続きさせることがいいとはとても思えない。