東京大学写真はイメージです Photo:PIXTA

東大に進学することは“ゴール”ではない。東大への進学は大きな夢や目標をかなえるための、ひとつのツールに過ぎない――。最新の東大・京大合格者数が計100人と全国トップレベルを誇る共学トップ進学校・西大和学園が考える次の目標は「東大をすべり止めにする」こと。創設者である著者が語る今後の展望とは。本稿は、田野瀬良太郎『なぜ田舎の無名高校が東大、京大合格トップ進学校になれたのか 西大和学園の躍進』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜ近年になって飛躍的に
東大合格者が増加しているのか

 西大和学園の東大合格者が、初めて京大合格者を上回ったのは2019年。東大には全国11位、関西では灘につぐ2位となる42名が合格、京大は34名でした。これ以降も東大の合格者は順調な伸びを見せており、躍進する関西の進学校として注目度も一気に高まっています。参考までに、直近5年間の東大・京大合格者数は以下のとおりです(現浪合計)。

【2020年度】東大53名・京大52名
【2021年度】東大76名・京大63名
【2022年度】東大79名・京大40名
【2023年度】東大73名・京大39名

 東大合格者が増えた背景には、関西圏において大学進学を取り巻く状況が変化してきたことも無関係とはいえません。

 2011年、大阪府教育委員会が「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」の制度を設け、北野高校や天王寺高校など公立高校10校を指定しました。大阪が府をあげて難関大学進学プロジェクトに取り組むことになったわけです。そうなると、いずれ京大の合格者がこれらの学校で占められることもたやすく予想できました。

 東大・京大の合格者数を進学校としての成長のバロメーターとし、また対外的にもアピールポイントとしてきた西大和学園ですが、奈良の地に根を下ろす私学として、どのような存在価値を生んでいくか。改めて、教員たちと議論を重ねる日々が続きました。そして「京大進学者の輩出に満足せず、その先を目指そう」という意識が、教員たちのあいだにも浸透していきました。

 ただ、そうした背景とは別に、2000年代以降は東京大学を目指す生徒が右肩上がりに増え続けています。

 もちろん、東大が海外の目から見ても日本を代表する大学であること、国内では異論なく最高水準の学びを受けられることが大きな理由ですが、東大独特の「進学振分け」制度を志望動機にあげる生徒も確実に増えています。

 進学振分け制度は通称「進振り」とも言われ、東京大学では2006年度の新入生から採用されています。学部の4年間のうち前半の2年間は教養にあてられ、幅広い教育課程で視野を広げたあと、3年の進級時に初めて専攻を選択できるシステムです。