「給付、給付、給付」の立憲民主・泉代表にガッカリ…野党がだらしなさすぎる真の理由衆院本会議で代表質問に臨む立憲民主党の泉健太代表(右)。中央は岸田文雄首相=24日、国会内 Photo:JIJI

岸田文雄首相が所信表明演説で「経済、経済、経済」と連呼したことが話題を呼んでいる。この演説に対する代表質問で、立憲民主党の泉健太代表は、国民が望むものは「給付、給付、給付」だと主張するなど論戦を繰り広げた。だが、岸田首相の「新たな経済政策」も、泉代表が主張する「給付」も、いずれも対症療法的な「バラマキ」にすぎない。なぜ野党による代案は面白みや斬新さを失ったのか。歴史的背景を踏まえながら解説する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

岸田首相の「経済、経済、経済」は
英ブレア元首相へのオマージュか

 岸田文雄首相は、10月23日の国会における所信表明演説で「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」と訴えた。

 思い返せば、英国のトニー・ブレア元首相も、首相就任時の演説(1997年5月)で「私には実行したい政策が3つある。それは教育と、教育と、教育だ」と述べていた。今回の岸田首相の演説は、それに倣ったのかもしれない。

 しかし、いくら言い回しを似せても、両者の思想や歴史的背景は大きく異なる。岸田首相はそれを分かっているのだろうか。

 ブレア元首相は労働党を率いていた際、過去に労働党が行ってきた「手厚い福祉による弱者救済」から路線を変更した。「訓練や教育による能力向上」によって雇用機会を拡大し、弱者を自立させることを目標としたのだ。

 また、ブレア元首相は「ニュー・レイバー(新しい労働党)」を提唱。旧来の労働党の「社会民主主義」路線と、ライバルである保守党が打ち出していた「新自由主義」路線を部分的に組み合わせた。

 資本主義と社会主義の長所を生かし合い、短所を補うという思想は、当時としては斬新だった。その一方で、岸田首相の「経済、経済、経済」には、どんな新しい要素が存在するというのか。

 というのも、岸田首相は「新たな経済対策」の一環で「4万円の減税」「非課税世帯への7万円給付」といった施策を検討するよう与党に指示したという。

 また、ガソリン代・電気代・都市ガス代などの負担軽減を重点的に行い、補助金支給を続けることも決定済みだ(本連載第339回)。

 これらは、ブレア元首相が脱却した「手厚い福祉による弱者救済」に見えてしまう。いわゆる「バラマキ」である。

 もちろん、物価高に苦しむ国民の負担を緩和し、一息つかせる意味では必要な施策だ。だが、物価高そのものを防ぐものではない。その効果は一時的なもので、効果が切れたら「また次」の繰り返しになりかねない。