ユニクロは「接客しない」!?
顧客の視点からサービスを考える

村井 それで思い出しましたが、ユニクロでは、ジーンズをたたむ枚数が1分間に7枚と決まっているそうですね。6枚なら1枚10秒の計算ですが、ちょっと頑張れば7枚を達成できると。目標設定が上手いなと思いました(笑)。

安本 どうなんでしょう。最近はそういう細かいところまではタッチしていないので分かりませんが(笑)。ただ、ユニクロには「こちらから積極的には接客しない」という前提があります。私も柳井さんも接客が苦手なところで意見が一致して、最初のころにそう決めました。

村井直志(むらい・ただし) 公認会計士。中央大学商学部会計学科卒業後、税務事務所、大手監査法人、コンサルティングファーム、上場企業役員などを経て、公認会計士村井直志事務所を開設。株式会社東朋FA取締役。日本公認会計士協会東京会にてコンピュータ委員長のほか、経営・税務・業務の各委員会委員、独立行政法人中小企業基盤整備機構にてIT推進アドバイザーなどを歴任。会計をビジネスコミュニケーションツールとして活用し、数字を駆使して、クライアントの経営改革支援を行う。各種講演、著作活動なども積極的に行っている。主な著書に、『決算書の50%は思い込みでできている』、『会計ドレッシング10episodes』、『会計直観力を鍛える』(ともに東洋経済新報社)などがある。

村井 小売業では珍しいですよね。

安本 もちろん、お客様に聞かれたら誠心誠意でお応えする。それ以外は、こちらからは声をかけずに、とにかく売場がきれいな状態を保つこと。お客様がその場を離れたら、商品を素早くたたみます。そうすることで、常に気持ちよく買い物をしていただける。スタッフ全員がそういったことを理解して実行し、それをマニュアル化してきました。

村井 先ほどお話した青山フラワーマーケットの場合も、顧客の視点を持っていろいろ工夫していて、中でも商品の仕入れを店長の権限で行っている点は上手いなと思いました。店長はお客様と接し、何が売れるのか、何を欲しがるのかを熟知している。現場に立つ店長が仕入れをすることで廃棄率が下がればそれだけ売上・利益も上がる、という仕組みができています。

安本 その仕組みでは、店長の能力がカギになりますね。売るのは上手いけれど仕入れが下手な人もいれば、売るのは苦手でも仕入れの才能がある人もいるからです。両方を得意とする人はあまりいませんから難しいところですが、いい人材を集めて成功させているのでしょうね。

 会社の理念によって社員たちは動きます。会社を経営するには、自分の会社は何が得意なのか、誰に喜んでもらいたいのか、何をどういう風に売っていくのか、そういうことを常に考えなければいけない。受動態から能動態の経営に変えなければ生き残れない時代になりました。

村井 会社が伸び悩んでいるといった会社は、そういった基本に立ち返ってみるといいですよね。