アベノミクスは本当に危険なのか?
「リフレはヤバイ」とする意見の背景

 金融マーケットは、円安とこれを背景とした株高に湧いているが、「アベノミクス」については相変わらず賛否両論がある。

 筆者は、公共事業を中心とした財政出動に賛成でない点で、全面的に賛成するわけではないが、アベノミクスの中核である「インフレ目標付きの金融緩和」によって、デフレの脱却を目指すことには賛成だ。

 反対意見にはどのようなものがあるのかと思い、本屋に行くと、慶応大学准教授の小幡績氏の著作『リフレはヤバイ』(ディスカヴァー携書)がよく売れているようだ。筆者とは意見を異にするが、若手の著者らしい生きの良い文体で書かれていて、なかなか楽しめる本だ。

 しかし、感心ばかりしているわけにもいかない。小幡氏は、マイルドなインフレを求める政策の何が「ヤバイ」と言っているのだろうか。

 同書の前書きには、「日本経済が破滅してしまう恐れすらある」とあり、「それは、リフレが国債を暴落させるからである」と書いてある。詳しくはぜひ同書を読んでみていただきたいが、破滅のシナリオは第三章「円安で日本は滅ぶ」に書かれている。前書きの紹介によると、この章は「円安と同時に起こる日本の金融市場と経済の危機について議論」するとされている。

 小幡氏は、円安はドル・ベースでの日本国債の値下がりを意味し、投資家がこれを避けるために日本国債を売り、米国債に乗り換える公算が大きく、この場合、さらに円安になるので、日本国債に対する売りが売りを呼ぶ展開になる危険があるという。

 為替レートは3月12日時点で対ドルで96円台まで円安が進んだ。一方、長期金利は0.65%とむしろ低下している。

 危機は突然やってくるのかも知れないが、今のところ、円安に伴う日本国債暴落は起こっていない。幸いなことだ。