デジタルツールと同様に
キャリアを「アップデート」
さまざまなデータから、Z世代と転職の深い関わりが見えてきたが、藤井氏は「彼らが転職をする理由は“将来への不安”だけではない」と話す。
「今の20代は、幼い頃からデジタルツールを使いこなしてきた世代です。デジタルツールはアップデートが必要なので、彼らの生活は常にアップデートとともにありました。しかし、大半の日本企業の働き方は彼らの感覚でいえば、未アップデートの状態。たとえば、副業が認められなかったり、コロナ禍はリモートワークができたのに、再び出社が義務化されたりと、古い働き方を続ける企業に対して疑問を抱きやすい傾向があるのです」
彼らに芽生えた疑問は、いずれ離職にもつながる。アップデート世代は旧態依然とした企業の働き方にシビアなのだ。
「また、リクルートが行った『転職者活動調査』では、26歳以下は“プライベートも重視できる環境”と“新しいことへのチャレンジによる成長”を職場に求めるという結果が出ています。これらは、一見矛盾しているように思えますが、前者は働く人の不満を解消する『衛生要因』、後者は仕事の満足度を左右する『動機付け要因』に当てはまるのです。この2つの条件を満たしていれば、社員が働きがいを感じられる職場といえますが、働き方改革以降『衛生要因』のみを提供する企業が増え、成長に不安を感じる若手もいますね」
衛生要因の改善も大切だが、やりがいなどの動機付け要因が不足すると、新しいチャレンジをしたい若手は物足りなさを感じる。昨今話題の「会社がホワイトすぎてやめたい若者問題」にもつながる環境だという。
「経済成長が著しかった頃の日本は、衛生要因を犠牲にして、みんなで同じ方向を見てマイカーを買い、マイホームを手に入れて豊かになりました。しかし、現代は、やりがいや社会貢献など“精神的な充実感”を仕事に求める人が増えています。それも一人ひとり理想が異なるので、企業は“会社の業績目標と社員のライフゴール”をうまく重ね合わせるマネジメントを行う必要があるのです」