A子さんと両親は、動画の流出経路や、誰がどこまで動画を所持しているのかが分からず、不安な状況に置かれたまま。さらには、学校が情報を何も教えてくれないために、B男を始めとする犯人たちに刑事処罰を与えることも、慰謝料を請求することもできなかった。

 このまま泣き寝入りするしかないのか……困った両親が当事務所へ相談に訪れ、われわれ弁護士の支援のもと、動画の流出経路など事件の実態解明と、動画流出に積極的に関与した者に対する刑事処罰に乗り出すことになった。

調査結果を隠し、犯人を教えない高校側……
期限が迫る中で取れる手は?

 一般的にはこういった事件があった場合、以下のような流れで対処・交渉が進んでいく。

(1)学校側が事実関係の調査を行い、被害者に報告する
(2)被害者側と加害者側で話し合い、賠償の方法を協議する
(3)話し合いがまとまらない場合、民事裁判で損害賠償を求める
(4)あるいは刑事告訴し、刑事裁判で刑罰を求める

 だが、今回、学校側は表沙汰になり学校の評判が悪くなることを恐れて、調査結果をA子さん側に渡そうとしなかった。完全な自己保身である。

 そこで、弁護士が学校側に面談を申し入れ情報開示を求めると、問題の動画が40人以上の生徒にスマホを通じて送信されていたことが明らかになったほか、動画の流出経路の証拠資料も入手できた。

 しかしそれを行った生徒の名前については頑なに口を閉ざし、犯人性(事件にかかわった犯人が誰か)についてはどうしても情報が得られなかった。

 これ以上は裁判を起こすしかない。裁判を起こすには「刑事告訴→警察の捜査→起訴」という段取りが必要だが、犯人がまったく分からない段階では、刑事告訴が受理される可能性はかなり低くなる。

 とはいえ、いわゆるリベンジポルノ(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)第3条3項「公表目的提供罪」は「親告罪」にあたる。親告罪は被害者が訴え出なければ成立しない犯罪であり、その訴え(刑事告訴)ができる期限は「犯人を知った日から6カ月以内」という時間的制約がある。このまま学校と押し問答を続けているうちに、告訴期間が過ぎてしまう恐れがあった。