欧米企業と比較して、日本企業は企業価値が低い

 また、PBR(株価純資産倍率)をみても、同様に評価が定量的に証明されます。PBRは、1株当たりの簿価に対して株価が何倍かという指標であるため、これが1倍を割り込むことは、資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは、成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される状態であり、「現時点で企業を解散・清算したほうがいい」とも評価できます。

 このPBRが、1999年12月末の東証上場企業平均が1.5倍であったのに対して、2023年4月末時点では、プライム市場で1.2倍、スタンダード市場では0.8倍まで低下しています。

 日本では、TOPIX500企業のうち、43.2%でPBRが1倍未満であり、米国(S&P500)が3.0%、欧州(STOXX600)が17.8%であるのに比べて日本企業のPBRは、欧米企業と比較して著しく低水準に留まっています。

経営者自身が持つ「持続性」に対する強い危機感

 では、このような外部が抱く危機感に対して、経営者自身は、どのように認識しているのでしょうか。

 PwCが実施した「第26回世界CEO意識調査」の結果では、その度合が定量的に示されています。PwCは、2022年10月から11月にかけて、世界105カ国・地域の4,410名のCEOから、世界経済の動向や、経営上のリスクとその対策などについての認識を聞く調査を実施しました。

 この調査では、176名の日本のCEOにも協力いただきましたが、調査結果から浮かび上がってきたのは、中長期的な持続性に日本企業の経営者自身が強い危機感を持っている、ということです。

「貴社は現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、経済的にどの程度の期間存続できるとお考えですか」という質問に対しては、困難な経済環境を踏まえて、世界全体の39%のCEOが、「現在のビジネスのやり方を継続した場合、10年後に自社が経済的に存続可能である」とは考えていませんでした。この傾向は通信(46%)、製造業(43%)、ヘルスケア(42%)、テクノロジー(41%)など、広範なセクターで共通しています。

 世界全体のCEOの約4割が自社の持続性に危機感を抱いていることもショッキングな結果ですが、特にショッキングな結果だったのは、日本企業のCEOの72%は、「現在のビジネスのやり方を継続した場合、10年後に自社が経済的に存続できない」と考えており、世界全体の39%と比較しても圧倒的に高く、強い危機感を持っていることが明らかになったことでした。

「外部の視点」が価値創造経営への転換を要請するだけでなく、「内部の視点」である、経営者自身が「持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現」に向けて、「変革の時」であると認識しているのであれば、経営管理を「戦略性のある価値創出活動を管理する状態」に向けて変化対応することが、経営者のミッションではないでしょうか。

なぜいま「価値創造経営」が求められるのか〈PR〉