「日記は、ただ書けばいいわけじゃありません」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)

日記を「感情に任せて書く人」「冷静に書く人」メンタルに表れる差とは?Photo: Adobe Stock

「書く行為」のコツ

 メンタルを安定させるために、「書く」ということは効果的です。
 それにより、「理性的な私」を手に入れられるからです。

 そして、どうすれば、「感情的な私」を「理性的な私」が手なずけることができるのでしょうか。
 それは、自分のことを自分で書くということ
 つまり、「日記を書くこと」です。

 ただ、ここで注意点があります。
 なぜなら、書けば書くほど「理性的になる書き方」と「感情的になる書き方」に分かれていくからです。

 その日、一日に起こったことを書くときに、感情に任せて書いてしまうと、

「あいつはムカつく。あいつはサイテーだ。消えてしまえばいい」

 というような書き方をしてしまうのです。
 それでは逆効果です。

「メタ認知」をしながら書く方法

 じゃあ、どうやったら「理性的な私」で書くことができるのでしょうか。
 そのコツは、一人称から三人称にし、過去形で書くだけです
「私」や「僕」という言葉を使わず、「あなたの名前」で文章を書くのです。

「私は腹が立っている」ではなく、「◯◯(自分の名前)は腹を立てた」と書く。

 それだけで「感情的な私」から一歩引いた視点を持つことができます。
 モヤモヤがなくならなかったり、イライラが治まらないときは、こうやって「三人称の過去形で書く」ということをやってみてください。

 それにより、いわゆる「メタ認知」を鍛えることができます。
 メタ認知とは、神様になった気持ちで自分を見下ろしたり、ゲームのキャラクターとして自分を操作するように、解釈をほんの少しだけ自己から外し、新しい枠組みを作ることです。

 これにより、「感情的な私」と「理性的な私」を、完全に切り分けることができます

自分で自分をコントロールするために

 メンヘラになる瞬間は、「誰しもが一度くらいは感じること」であり、一瞬だけ目が曇ったような状態になるだけです。
 そこから抜け出す第一歩として、「頭んなかがメンヘラになっている!」という気づきを起こし、自分を客観視しましょう。

 そこで理性的になるためには、「書く」という行為が効果的なのです。
「三人称で過去形で書く」という方法により、「感情的な自分」から一歩引いた視点を手に入れましょう。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。より一部を抜粋・編集したものです)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。