「やる気をなくして何もかもがむなしくなるときがありませんか?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
何もかもがむなしくなる
やる気を失って、ボーっとしてしまい、メンヘラっぽくなるときがありませんか。
まわりのことに対して極端なほどに無関心、無配慮になってしまうことが、誰にでもあると思います。
人は精神的に傷つきすぎたり、ツラすぎる環境で自分を生かすために、
「あえて恐怖や悲しさの感情を鈍感にする」
という機能が備わっています。
特に、人間の場合、脳のなかの感情をつかさどる部分である「扁桃体」が、ツラい経験により活動が過剰になってしまうことがわかっています。
過酷な人生をずっと歩き続けていると、余裕がなくなり、成長の過程で、あえて自分の感情を押し殺そうとしてしまうのです。
空虚さは外から見えない
こうした「空虚型」のメンヘラは、他人に気づかれにくく、自分でも気づきにくいことが特徴です。
パッと見では、あまり感情を表に出さない人と思われるだけです。
しかし実際は、「生きていても仕方ない」「自分には生きるだけの価値がない」といった思いを抱えて苦しんでいるかもしれません。
これが行きすぎると、まわりの人の評価や社会のルールにまで無頓着になってしまいます。
人に優しくされても反応ができず、服や外見に対して配慮できなくなり、「他人に期待する」ということがまったくできなくなります。
「どうせ捨てられるから」と思うことで自分を守り、あきらめることを優先してしまうのです。
そうなってしまうと、他人とうまく関係を築くことができません。
「刺激」を求めよう
そこで大事になるのが、「希望を抱き続けること」です。
あなたには、過去に、親しい人が離れてしまったり、裏切られたような喪失体験がないでしょうか。
それを克服するためには、人に会ったり環境を変えたりすることで、脳を刺激する必要があります。
たとえば、ずっと同じ職場、同じ環境で働いてきた会社員の人が、燃え尽きたみたいにやる気や労働意欲を失ってしまうことがあります。
人は、同じ環境や同じ人とばかり会う生活を続けていると、脳が徐々にストレスを感じてくるようになっています。
「何もないことがストレス」という考え方が生まれ、気持ちが落ちこんでしまうのです。
そして、気持ちが落ち込むと同時に、脳が新しい刺激を得るために現状へのささいな不満などを大きな問題として認識させて、
「自分はなんて不幸なんだ!」
という悲観的な考えを生んでしまいます。
たとえ何も問題がないように見える人でも、問題がないからこそ刺激が得られず、うつっぽく燃え尽きた状態に陥ってしまうのです。
だからこそ、人間は脳に新しい刺激を招き入れる必要があります。
「めんどくさい」に打ち勝つ方法
『イエスマン “YES”は人生のパスワード』というコメディ映画があります。
「ノー」が口癖で後ろ向きな思考の持ち主である主人公が、生き方を変えるために「どんなことに対しても『イエス』と答える」ことで、徐々に意味のある日々を送れるようになり、人生が変わっていくという物語です。
この主人公は、もともと悲観的な考えを持つ平凡な男性でしたが、意図的に楽観的な選択肢を選ぶことで新しい希望を生み出す力を手に入れました。
現実も同じです。
あえて反対の行動を続け、脳に定期的な刺激を与えることで、考え方を根本的に変えることができます。
先ほどの「希望を抱き続けること」を自分に与えるためにも、最初の一歩が大事になります。
人から誘いを受けて、めんどくさいと思っても、
「行けたら行くよ」
など、少しでも前向きな言葉で返してみるのです。
新しく人と会う機会を、できるだけ増やすようにしてみてください。
その一瞬の判断が、その後の人生に大きな変化を与えます。その可能性を、「めんどくさい」という感情だけで潰さないのがポイントです。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。