軍事面の意思疎通再開で
米中の衝突リスクが低下
11月15日、1年ぶりとなる米中首脳会談が実現した。昨年11月のインドネシア・バリ島でバイデン大統領と中国の習国家主席が会談した際、米中間の意思疎通を保つことで合意したが、今年の2月に中国の偵察気球を米軍が撃墜したことで関係が冷え込んだ。今回、米国でのAPEC開催という機会を捉え、夏以降に米国から主要閣僚が相次いで訪中して意思疎通に向けた取り組みを積極化させ、ようやく首脳会談の実現に至った。
首脳会談の第一の目的は、滞っていた軍事面での対話再開であった。米中間には、中国は軍事技術を発展させたい、米国はそれを防がなければならないという構造的な問題が存在する。このため、米国の対中抑制策とそれに対する中国の反発という構図が続いており、偶発的な軍事衝突の発生リスクが無視できない。
今回は、こうした懸念を表明し合う場として両国の軍高官の対話再開が合意され、軍事面の直接的な関係悪化にいったん歯止めがかかりそうな状況である。
これに加えて、AIの軍事利用への懸念を話し合うため、米中の政府間対話を立ち上げることが確認された。また、気候変動問題への対策に加え、米国内で問題となっている医療用麻薬の過剰摂取の急増に関して、原料の主要製造国である中国と共同して対処するための作業部会の立ち上げも合意するなど、全体として両国の協力姿勢が押し出される格好となった。