「国語は得意だけど、算数が苦手」「好奇心旺盛だけど、落ち着きがない」――。子ども一人ひとりに「苦手」はあります。“克服させてあげたい”と思うのが親心ですが、実は苦手なものへ注力するのは逆効果です。25年間で延べ5000名以上のバイリンガルを育成した経験から解説します。(TLC for Kids代表 船津 徹)
「苦手の克服」はかえって遠回り
世界的ベストセラーとなった『やり抜く力 GRIT(グリット)』(ダイヤモンド社)の著者、ペンシルバニア大学のアンジェラ・ダックワース教授は、「自分のやっていることを心から楽しんでこそ“情熱”が生まれる。成功者たちは、自らの目標に向かって努力することに喜びや意義を感じている」と述べています。
ポジティブ心理学の第一人者、メルボルン大学のリー・ウォーターズ教授は、著書『ストレングス・スイッチ』(光文社)で「子どもの長所を探してさらに伸ばす戦略を取れば、真の才能が覚醒する」と述べています。
両研究者は、子どもが自分の「やりたいこと」や「長所」を突き詰めていくことが、「自発的なやる気」につながり、自分らしく自己実現していく原動力になる点を強調しています。
つまり、苦手の克服よりも「強み作り」で子どもは伸びるのです。
子育てや教育に関わっていると、どうしても子どもの「悪い面」や「周囲より劣るところ」が目に付くようになります。しかし、「悪い面」と「良い面」はコインの表と裏の関係であり、1つの心の働きです。問題は、親や指導者が「どちらに目を向けるか」です。
たとえば、「落ち着きがない」は、多くの親に共通する悩みですが、「活発でやる気がある」「好奇心が旺盛」という「強み」でもあります。「落ち着きのなさ」を「強み」と捉え、活発な動きが要求されるスポーツに参加させたり、好奇心を刺激する遊びや学びの環境を用意してあげると、子どもの「強み」が覚醒してくるのです。
もちろん「落ち着きのなさ」が消えてなくなることはありませんが、良い面を伸ばしてあげると、強みが大きくなる分、弱みは小さく、目立たなくなるのです。
勉強も同様で、「国語は得意だけれど算数が苦手」という子どもには国語をさらに勉強させてモチベーションを高めてあげると、結果として「算数の克服」にもつながっていきます。ざっくりですが、「国語8:算数2」くらいの割合で取り組ませ、国語でずば抜けさせてあげると自信が大きくなります。すると、「算数にも挑戦してみよう!」という意欲が湧き上がってくるのです。
子育て成功のカギは「強み育て」にある
子どもが社会の変化に翻弄されずに、自分らしく幸せに生きていくには、失敗や挫折に負けない「たくましさ」を確立しなければなりません。一生ものの武器になるたくましさですが、どのように育てれば良いのでしょうか?
たくましさが育つ要因は、家柄、血筋、遺伝ではありません。もちろん親の学歴や職業も無関係です。「子どもの潜在的な強みを引き出すこと」でたくましさは育つと断言できます。
つまり、子育てで最優先すべきは「強み育て」なのです。強みは、音楽でもスポーツでも勉強でも、なんでもいいのです。