そこでは「このミーティングはすごくよかった」という人もあれば「超・時間の無駄だった」という人もいるということの方が、実は大事かもしれないのです。そのどちらからも「良かったという人はなぜ良かったと言っているのか」「無駄だという人はなぜそう感じていて、その人にとっては何が理想なのか」ということを聴く。ここの差分に発見があり、新しい進化のタネがあるはずなのです。

違いを聴き合うための場としての「1on1」ミーティング

こうした新しい仕事のあり方では、マネジメントが「このミーティングはいいミーティングだったということにしよう」と一方向にチームの意見をそろえることに力を入れても、意味がありません。むしろ違いが表に出るようにし、その違いがどこから来るのかをみんなで出し合い、その差分からまた新しい発見をするというサイクルを回したいのです。

それぞれの違いが表に出てくるようにするためには、メンバーが「話を聴いてもらえる」と思えなければなりません。特に個人的な関係性が良ければ良いほど「せっかくリーダーの彼・彼女は一生懸命やっているのに『クソつまらなかった』なんて言いづらい」となりがちです。しかし、それを言ってもらうことが、チームには必ずプラスになります。そのためには「聴いてもらえる」と思ってもらう必要があります。

組織で聴き合うとき、みんなが同じ場で一斉に感想を言い合い、聴き合おうとするのは難しいことです。同じ場を共にした後、10分でも15分でも1対1の時間を取って、「さっきのミーティングはどうだった?」と質問を投げかけ、「こう感じた」という感想に対して「どのあたりがそう思ったか」を深く教えてもらうことで、差分を発見し、ヒントがつかめるようになると思います。

1on1というのは、本来、そういう役割を担うミーティングだと思います。1人1人の違いを力に、価値に変えていきたいときに、一斉の場では表出しにくいものを、場面を変えて1人ずつ聴いていく。それもリーダーとメンバーという「ハブアンドスポーク型」に限らず、「ネットワーク型」で相互に行うのが理想です。そうすることでお互いに発見があるからです。

1on1をマネジメントの一手法、あるいは人事の言う新しい面談のやり方として、育成や人事評価の部類にとらえている人も多いかと思いますが、私はそれはすごくもったいないことだと思います。

1on1は、私たちがビジネスを進めるときの基本態度であり、テクニックというよりはマインドセット、さらに言えば“身体の使い方”のようなものとセットとなる、コミュニケーションそのもののあり方だと考えます。