「コミュニティを持つことがファンの熱量や活動を維持することにもつながっています。コンテンツ自体をファンの人たちが自ら作っていくような仕組みによって、(漫画やゲームを始めとしたコミュニティの母体となる)サービス自体がなくなったとしてもコミュニティは継続し続ける。そのような活動が生まれるのもコミュニティの良さの1つだと考えています」(石川氏)

ナナオンのコミュニティ「ナナコミ」ではDIDとNFTを活用し、ゲームアプリが終了後もゲーム内で取得したアイテムを閲覧できる仕組みを作った
ナナオンのコミュニティ「ナナコミ」ではDIDとNFTを活用し、ゲームアプリが終了した後でもゲーム内で取得したアイテムをアルバムのように閲覧できる機能を作った

エンタメ業界を悩ませる「外部プラットフォーム依存」問題

なぜ大手エンタメ企業がGaudiyのサービスを活用するのか。そこにはエンタメ業界が抱えている「外部プラットフォームへの依存」という課題も大きく影響している。

近年のエンタメ業界においては動画であればYouTube、音楽であればSpotifyといったようにプラットフォームが大きな影響力を持っており、これらを通じてファンへとコンテンツが提供されることも多い。

そのためファン体験がプラットフォームに依存してしまうほか、コンテンツホルダーは重要なユーザーのデータを自社内に蓄積しにくい上に、手数料の問題にも悩まされることになる。

「プラットフォームに依存していたがゆえに、一番重要なファン(やそのデータ)という資産が内部にストックされていなかったことが課題だと考えています。そうではなく、(エンタメ企業)自らが構築したコミュニティにコアなファンが集まり、その人たちが継続してサービスに親しんでくれるような状態を作りたいという思いが根幹にあります」

「そこでポイントになるのが、(ファンのコミュニティ内での活動の)価値を正しくトラッキングして還元できるスキームが備わっていること。今まではSNSなどでファン活動をしていたとしても、貢献度をトラックできる仕組みがなかったので、還元もできませんでした。(Gaudiy Fanlinkでは)そのような活動をバーティカルなコミュニティアプリや、外部のサービスとデータを連携できるDIDなどの仕組みを用いて記録し、それを基にNFTやコインを付与しながら関係性を深めていくことができる。これは自社でプラットフォームを持っているからこそできることです」(石川氏)

『約束のネバーランド』のコミュニティ。連載終了後の現在もコミュニティ内ではファン同士の交流が続く
『約束のネバーランド』のコミュニティ。連載終了後の現在もコミュニティ内ではファン同士の交流が続く

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「幼少期にテクノロジーやイノベーティブな(外の)コミュニティに触れてから自分の人生が変わった」という自身の原体験もあり、Gaudiy創業前からテクノロジーやコミュニティへの関心が強かったと話す石川氏。19歳でAI関連の会社を立ち上げるなど10代の頃から事業を運営してきたが、2017年に「ブロックチェーンのコミュニティを見て衝撃を受けた」ことが1つの転機になったという。