「トークンを保有するユーザーの人たちが、そのサービスやコミュニティを本当に良くすることだけを考えていたんです。1万人しかしないようなサービスのイベントに参加してみても、創業時を知っているメンバーでもない人が自分のことのようにそのサービスを語り、どうやったらこのサービスがもっと良くなるかを熱心に議論していました」

「さらにそれが普及していった先には(サービスへの)貢献自体が還元される仕組みも備わっている。このようにモチベーションとインセンティブを絶妙なバランスで共存させているトークンエコノミーにおけるコミュニティは、ものすごく理想的だと思いました」(石川氏)

このような仕組みはすべてのものに適用できる可能性があるため、さまざまな事業者がクリプトエコノミクスを取り入れた理想的なコミュニティを作れるサービスを実現できないか──。そんな発想が出発点になったという。

2018年5月にGaudiyを創業し、同年10月にGaudiy Fanlinkの原型とも言えるブロックチェーンを活用したコミュニティサービスのベータ版をローンチした。

最初からエンタメ領域に絞っていたわけではなかったが「コミュニティが成り立ちやすい一方で、ユーザーへの還元というスキームが最も実現されていない領域であり、外部プラットフォームへの依存度が高いといった課題も存在している」ことから、エンタメにフォーカスすることを決めた。

「エンタメは日本として誇れるカルチャーであり、世界で勝てるチャンスがあると思っています。Axie Infinityのような新興のIPがあれほど盛り上がるのであれば、日本発のIPにもっと大きな価値がつく可能性もある。またWeb3のUXは拡張経済とよく言われるのですが、日本のエンタメは二次創作やカラオケなど拡張という観点でも進んでいます。(Web3のUXとエンタメには)類似する部分も多く、なおかつ日本の強みでもあるエンタメという切り口で挑戦したいと考えました」(石川氏)

石川氏が「2018年からやってたことが今になってようやく評価されるようになってきた」と話すように、時間はかかったものの、事例が積み重なってきたことで直近では大きな取り組みに向けた協業や提携も進みつつある。

今回の投資家であるサンリオとはWeb3領域でタッグを組み、2023年前半を目処にグローバル向けのキャラクターコミュニティサービスを立ち上げる計画。メタバース事業の開発に向けて社内でも専門の組織を立ち上げ体制を強化するほか、東南アジアを軸にグローバル展開に向けた準備も進めていく方針だという。