感情が伝染するということは、皆さんも経験しているはずです。もらい泣きや、みんなが笑っているとなんとなく楽しくなってしまうということは、よくあります。家で独りで映画を見るのと映画館で見るのとでは体験が違うというのは、感情が伝染して、増幅するからです。

これが感情だけではなく、内発的動機でも同じことが起こるということがわかっています。組織やチームの中で、何人か内発的動機を持って動けている人がいれば、まわりも内発的動機を持ちやすくなります。

組織を動かす上で、動機のやり取りや交換ができているかどうかということは、大切なポイントとなります。その伝播の仕方について、先生と教わる人という関係性での実験があります。

この実験では、教わる側の人に「この先生は高いフィーを払ったら教えるといって来た」と伝えたケースと、「この先生は情熱を持って教えたいといって来た」と伝えたケースとで、教える内容は全く同じであるにもかかわらず、後者の教わる人の内発的動機が圧倒的に上がることがわかりました。さらに、教わった人が持ち場に帰り、自分のチームに教わったことを伝えたときのチームの内発的動機も、後者のグループの方が高くなるといいます。

実際にスタートアップなど、創業者が内発的動機を高く持っている組織では、その動機が社内にうまく伝われば、全体の内発的動機付けにも影響しているケースもあります。

傾聴により内発的動機のオン・オフスイッチが表に出てくる

ここからはいよいよ、モチベーション、内発的動機付けと「聴く」ことの関係性について、説明していきたいと思います。

上述した私の講演の例でいうと、初めは「やらされ感」が高い状態です。エールはフラットな組織ですが、もう少し上下関係がハッキリした組織で私が部下の側であれば、「この日、このテーマでやってください」と言われて仕方なくやるモードになりかねないシチュエーションです。

それが「楽しかった」と私が感じられたのは、自由度が高かったことももちろんあります。ただし「自由である」というだけでは「自分は何が好きで、何を感じ考えているか」「自分が今、やる気があるのかどうか」は、まだわからない状態です。

人は外発的動機だけで自律的に仕事を進めることはありません。内発的動機に寄れば寄るほど、仕事を自分で進めようという気持ちになります。組織に属する人がそういう気持ちになるためには、第三者はどのように関わり、サポートすればよいのでしょうか。その方法についても、教育分野の研究でわかっていることがあります。