外発的動機付けの自律化に向けた他者からのサポート
 

まずは傾聴。傾聴というのは、まだ言葉になっていない、しゃべっている本人もよくわからないけれども言葉にすることでだんだんわかってくるような考えや感情を、ただ聴くことです。解決策を考えたり手を打ったりするためにではなく、ありのままに相手が感じていることを聴き、話してもらうことそのものに意味があります。話すことで、本人が「自分はこういうことが面白いと感じるのか」「こうやられると、やる気がそがれるのか」とわかってくることが大事です。

聴いていくと「一生懸命にやっている時に『それ無駄じゃない?』とひと言言われると全部台無しになる」という人もいれば、「がんばってるねと言われると『アンタのためにがんばってるんじゃない』と感じてしまう」という人もいます。じっくりと聴かれているうちに、それぞれが少しずつ言語化できるのだと思います。

傾聴によって言語化が成されると、聴き手にも「なるほど、よかれと思って『がんばってるね』と言っていたことが逆効果だったんだな」と気づきになり、次からその人に対しては、そのようなコミュニケーションは取らなくなります。話し手のやる気、動機が持続するようになります。

つまり「傾聴すればすぐに答えが出る」とは期待せず、「話している本人も言葉にする機会があることでだんだんわかってくるんだな」という前提で聴くと、1人1人の内発的動機のスイッチや、動機が消えてしまうスイッチが少しずつ表に出てくるということです。それが結果として、その人の内面にある動機付けの源を育むことになります。

後編では、内発的動機の維持・向上に「聴く」「聴かれる」ことがどのようにつながるのか、さらに詳しく考えていきたいと思います。