2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

・クリプト
2022年はクリプト・Web3の年でした。持たざるものにアドバンテージがある領域として、逆説的に多くの若い起業家を生み出したと思います。

2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。

5日で100万ユーザーを記録したChatGPTの衝撃が記憶に新しいと思いますが、この「ChatGPT」やText to Imageの「Midjourney」をはじめとするGenerative AI(生成AI)アプリケーションが2023年、さらには2020年代における最大の変化の1つと思います。

この大変革を牽引しているOpenAIのサム・アルトマンも、とあるインタビューで「AIによって今後10年、知能とエネルギーの限界費用がゼロに向かって急速に推移し、あらゆるもののコストに大きく影響する」と述べており、まさしく知的活動におけるコスト構造そのものが変わるパラダイムシフトを目撃しています。

AIはデータが物を言う世界ゆえに、これまでスタートアップがDay1から独自のプロダクトとしては取り組みづらい分野でした。しかしOpenAIやStability AIなどによって、AIといえど一部の領域ではゲームルールが明らかに変わりました。

彼らが大量のリソースを投入して学習させた大規模言語モデル(LLM)をオープンソースやAPIとして公開してくれているからです。これらをベースモデルにしてエンドユーザーのニーズに合わせて調整したアプリケーションとして展開することが可能となりました。

こうした変化によって、アメリカではテキストコンテンツ生成のJasper、Copy.aiや動画編集のRunway、コード生成のReplitなど、スタートアップによるAIネイティブなプロダクトが勃興しています。もちろん過剰な側面もあると思いますが、例えばユニコーン企業となったJasperは2022年の収益で7500万ドル(約102億)を見込んでおり、実も伴っています。

またテックマニアだけの熱狂ではない点も重要なシグナルです。テック業界からは程遠いところにいる私の学生時代の友人ですら、ChatGPTを使いこなすことで何とかコーディングをしたり、エクセルでのグラフ作成も丸投げしたりと、かつてない体験に衝撃を受けていました。他にも、TikTok上にはGenerative AI系のカメラアプリで作成された動画がマス層によって大量に投稿され、気づかぬうちに溶け込んでいます。

一方で参入しやすいのは既存企業も変わりません。実際にMicrosoftはDesignerというOpenAIのDALL・E 2を活用したAIデザインツールの開発をしたり、Canva、GitHubもすでにプロダクトにGen AIを組み込んだり、AIシフトを加速させています。スタートアップに求められるのは、AIネイティブな体験を設計できるかであり、そうした企業が出てくるのが楽しみです。