昔で言うと、東大生が官僚になるみたいな話ですよね。才能のあるなしっていうのはそもそも不公平なんだから、たまたま親から才能をもらった人たちは、やっぱり人の10倍、100倍働いて社会に貢献しないと。「それが十字架を背負っている人たちの役目ですよね」と言うと、みんな真剣に聞いてくれます。

給料に関しては、高ければいいわけじゃないとはいえ、適正なレベルでオファーすべきだと思っています。適正な金額が払えないのであれば、まず社長が頑張って稼がないと(笑)。給料って、専門人材にとってのプライドですからね。

及川:M&Aチームの育成に関しても、SHIFT流、丹下さん流の進め方はありますか。

丹下:専門性の部分はすでに十分持っている人たちだから、そこに対してこっちから何か言う必要はありません。僕が伝えているのは、人間の心をどれだけ理解して、配慮できるか。M&AとかPMI(Post Merger Integration、M&A後の経営統合のプロセス)って結局、経営者ありきの話ですからね。例えば、「資料を“出させる”」みたいな言い方は絶対にしないようにと。そんな言い方したら、相手の気分を害するだけで何のメリットもないでしょう?

 

及川:M&Aチームとは週次で会議をされているんですよね。

丹下:毎回、新規の案件を数件検討しています。だいたい年間で二百数十件をソーシングして、意向表明書を出すのが20件くらい。成約まで行くのが5、6件という感じですね。

週次の会議の場ではリストでアプローチする順番も決めます。ですがむしろその後、先方に刺さるオファーの仕方を議論することを会議の主題にしたいので、チームメンバーには「各社の基本的なKPIは頭に入れて、聞かれたらパッと答えられるようにしておいて」と言っています。最近ではそれも“型”になってきているので、担当者が必要な情報をスライド1枚にまとめてくれています。

結局ソーシングにしても、エグゼキューションにしても、PMIにしても、M&Aチームには習熟度が求められますよね。だから、社長の一存で「今年はM&Aしません」なんていうのは、あまりよくないと思います。

M&Aにはだいたい三種類あるんですよね。1つ目は製薬業界で時々あるような、1兆円くらいの規模の超大型M&Aを一生に一度やるパターン。2つ目がたまたまM&A仲介会社さんから案件を持ち込まれて、「じゃあ、買います」というパターン。3つ目が社内にM&Aチームをつくって、毎年淡々とやり続けていくパターン。長期的にうまく行きやすいのは、この3つ目だと僕は思っています。(後編に続く)