コロナ禍で減少したタクシー利用の需要が徐々に回復してきている一方で、供給は追いついていない。「2020年からの3年間で、国交省で登録されているタクシー乗務員の数が約20%減っている」(近藤氏)状況であり、もともと採用力が強い業界ではないため、乗務員の数が増やせずに困っている事業者も多い。

電脳交通のタクシー配車システムの引き合いが増えているのも、「現在の戦力で1台あたりの売上生産性を最大化していく仕組み」へのニーズが高まっているからだ。

同社のサービスは配車オペレーター用のシステムとドライバー用の車載タブレットで構成される。オペレーター用のシステムでは注文内容と車両状況を1つの画面上で確認でき、最短数クリックで配車の指示が完結する。会社ごとの配車ロジックに基づき、システム側が最適な配車をサポートする仕組みも搭載した。

タクシー配車システムの画面イメージ
タクシー配車システムの画面イメージ

1つのカギを握るのが「配車率」だ。配車率とは顧客からの発注に対して実際にタクシーを手配できる割合のこと。近藤氏によると、社内のデータなどを踏まえても「配車率の平均は70%前後」なのだという。つまり30%程度は失注しているわけだ。

この大きな要因が「供給が不安定になり(発注が多い時間帯などに)受注できない状況になってしまっている」(近藤氏)こと。乗務員不足の影響などもあるが、電話での配車依頼に対応できないことなどにより、空車があるにも関わらず失注してしまうケースもある。

特に地方のタクシー会社の場合は「今でも受注の95%以上が電話によるというところも珍しくない」ため、配車業務の効率を高めることで「取りこぼしを減らし、配車率を改善できる」余地が残されているという。

たとえば、ある地方の小規模なタクシー会社では人材が不足しており、社長やドライバーが持ち回りで配車係をしていた。それが現場の負担にもなっていたが、電脳交通のシステムを活用し、都市部にある本社へと配車機能を移管。オペレーターが遠隔から配車をする環境を整えたことで、ドライバーは運行に専念できるようになり、失注も大幅に削減されたという。

電脳交通のシステムを使って配車をするオペレーター。遠隔からでも現地のマップや状況を見ながら配車ができる
電脳交通のシステムを使って配車をするオペレーター。遠隔からでも現地のマップや状況を見ながら配車ができる

IVR活用で「1カ月で約70時間分の工数削減」

配車システムに搭載されている「IVR(問合せの自動音声対応)」機能も配車率を改善する仕組みの1つだ。この機能では現地への到着時間を確認するための電話に対して「自動音声で予定時刻を伝える」といったように、配車依頼や顧客からの問い合わせの一部に自動で対応する。

近藤氏の話では、顧客からの電話には「新規受注につながらない電話」が一定割合含まれている。中でも「乗車前の顧客からの2回目の電話」は到着時間の確認やキャンセルの可能性が高く、オペレーターの業務効率化だけでなく、顧客の満足度向上の観点からもIVRを活用した方が効果的な場面も多いという。