このアプローチを可能にするのが、自社で抱える工場機能とプロトタイプの開発に特化した専門チームの存在、そしてroot Cの製造を通じて培った土台となる技術だ。

New Innovationsでは2021年から自社で工場設備を構え、root Cの製造や新製品のプロトタイプの開発を効率よく進められる環境を整えてきた。当初は栃木県に工場施設を保有していたが、2023年には本社オフィスと同じ建物内の別フロアに施設を移転。よりスピード感を持って開発できる体制を作った。

New Innovationsでは開発スピードを早めるため、2021年に栃木に工場を開設。現在は本社オフィスと同じ建物内に工場機能を移転している
New Innovationsでは開発スピードを早めるため、2021年に栃木に工場を開設。現在は本社オフィスと同じ建物内に工場機能を移転している

開発チームの編成も特徴的で、大きく「量産化を担当するエキスパートのチーム」と「R&Dやプロトタイプの開発を“やり散らかす”チーム」に分かれている。社内には中尾氏をはじめロボットコンテストを経験してきたエンジニアが10人以上在籍しており、ロボカップで活躍したメンバーも集まってきているという。

「うちの競争力の源泉となっているのが、やり散らかすチームです。このチームの役割は、量産性や商用化の観点もある程度考慮しながら、まだ誰も作ったことのないような製品を1日でも早く1度実現すること。極端な話、オムライスの調理用ロボットであればまずは1皿作ったら壊れてしまうものでもいいので、1日でも早くデモができる状態を作ることです」(中尾氏)

社内のイメージ
New Innovationsの社内のイメージ

各プロジェクトで製造する製品は異なるものの、状態管理技術を始めとしてroot Cで培った技術を活かせる部分も多い。コアとなる技術をモジュール単位で管理し、“パーツ”として複数のプロジェクトに転用できる仕組みを作ることで、開発のスピード自体も早められる。

事業構造も特定の企業との間だけで完結する受託開発モデルではなく、システム面の知財はNew Innovationsに帰属する。“ローンチパートナー”として業界を代表する企業の声をもとに開発したプロダクトは「業界のニーズ自体を反映したもの」(中尾氏)であるため、同じ課題を抱える別の事業者にも提供するし、そこで生まれた技術的な資産は他のプロジェクトにも活用する方針だ。

「このやり方であれば、自分たちはマーケティングのリスクを極力負わずに済むというメリットもあります。マーケットの代弁者の声を聞きながら、販売を握った状態で商品開発ができる。その製品を本当に実現できるかどうかのリスクは負いますが、できたけど売れるかどうかわからないというリスクは負わないので、本腰を入れて開発ができます」(中尾氏)