収益はハードウェアの販売代金と月額のサービス利用料を見込む。開発するすべてのロボットはクラウドにつながっているため、「新しいメニューの配信」など既存のロボットがアップデートされるのもポイントだ。
もっとも、現時点ではRaaS(ロボティクス・アズ・ア・サービス / ロボットをサービスとして定額で販売するモデル)のようなモデルは考えておらず、あくまで「物売りとしてのビジネス」を軸にする方針。ロボット1台あたりの価格は「500万円〜1000万円」程度の想定で、当面は大手企業向けに数を量産する前提で設計をしていくという。
エクイティとデットで約54億円を調達
今回の資金調達は、New Innovationsにとって2020年6月に1.7億円の調達を発表して以来、約3年ぶりとなる。
エクイティとデットを組み合わせたものだったこともあり、ファイナンス自体は数年がかりの長期戦となったが「(調達環境の悪化など)市況の影響はあまりなかった」と中尾氏は振り返る。
「事業進捗が遅れて(ファイナンスに)時間を要したり、反対に事業がうまくいったので大きな調達に踏み切れたり、自社の状況によるところが大きかったと思います。私たちの場合はハードウェアが絡んでくるので、開発機材や製造設備などお金がかかる。エクイティの投資家が期待するような資本利回りにはそぐわない部分も多いので、少し時間はかかりましたが、デットも組み合わせることによってバランスの良いファイナンスができました」(中尾氏)
早い段階から製造設備を外に出し“ファブレス”型で経営するという選択肢もあるが、中尾氏自身は「アンチ・ファブレス」を掲げ、初期は自社で内製化することにこだわる。
その分だけ製造設備などのコストは増えるが、「自社で1製品1ラインを持つことが、付加価値の高い製品を開発することや、プロジェクトの立ち上げスピードを早くすることにつながる」というのが同氏の考え方。将来的に量産化に踏み切るフェーズにおいては、ファブレス型で運用する方針だという。
「AIやロボティクス技術を用いて省人化や自動化に取り組んでいますが、『人のリプレイス』をやりたいわけではありません。たとえば飲食店やサービス業における接客は、人がやるからこそ生まれる温もりなど、人的な付加価値が大きい部分です。私たちが自動化や省人化をするのは、あくまでロボットの方が得意とする工程。ここを徹底的に効率化することにより、人の手を介すことで付加価値が生まれる業務に、より多くの時間を使えるようにしていきたいと考えています」(中尾氏)