及川:そういう席で、十河さんが必ず聞いているポイントなどあれば教えてください。

十河:なぜ起業したのかと、今後何を目指していくのか、この2点は必ず聞きます。要は「圧倒的ナンバーワン」への想いをいかに共有できるかです。そのためにできることや必要なことを熱く議論する中で、互いに理解が深まり、気持ちが固まっていくことが多いです。

及川:ということは、すでに「圧倒的ナンバーワン」になっている企業というより、これからなれそうな企業を買っている?

十河:そうですね、マーケット自体の成長スピードが速いですから。現時点でどうかはあまり重視していません。

デジタルマーケティングやインフルエンサーマーケティングの企業には、大きく2つのタイプがあります。1つはプロダクトドリブンで、テクノロジーやデータベースに強みを持つタイプ。そしてもう1つはオペレーションやセールスを得意とするタイプです。当社は前者の強みを持っていますので、パートナーとして補完関係にあるのは、後者のタイプです。互いの強みを活かし合うことでナンバーワンを狙える体制をつくるという観点でも、M&Aは有効な手段です。

今、世の中でどんどんテクノロジーの重要性が増していく中で、危機感を感じている経営者が多く、当社としてはグループインのメリットをアピールしやすい状況です。加えて、当社はアジア各国に拠点を置いているので、グローバル展開を図りたい会社に対しても、リソースを提供できます。実際、M&Aでジョインしたタイの会社の事業を半年で一気に複数市場に展開した例もあり、いい連携が取れています。

PMIの肝はスタートダッシュ、グロースの手応えが現場に火をつける

及川:先期(2022年12月期)に黒字転換を果たされました。これだけのスピード感でM&Aを重ねつつ、着実な事業成長につなげてこられた秘訣は何でしょうか。

十河:1つ大きかったのは、優秀なCFOを採用できたことです。元モルガン・スタンレーのTMT担当で、メルカリやLINEのIPOも支援していた人物なので、インターネットビジネスの解像度も高い。理想的なバックグラウンドの持ち主です。

出会いは数年前、私がモルガン・スタンレーの東京オフィスを訪問した際に、たまたま向かい合わせの席に座ったのが彼でした。お互い香川県出身と分かって「今度、香川飲みしましょう」と誘ってもらい、内心「こんなチャンスはない」と盛り上がりまして。その席で「CFOに興味ないですか?」と水を向けて、そこから一気に口説きました(笑)。