テクノロジーを用いて「心房細動」を見つけやすくする仕組みを
心房細動の診断において大きな課題になっているのが「なかなか見つけけられない」ことだ。
カルディオインテリジェンス取締役COOの波多野薫氏によると日本には心房細動の患者が約100万人いるが、実は「(心房細動になっているものの)未診断でまだ発覚していない人」が同じくらい存在すると考えられているという。
早く見つけられなかったがゆえに、対策が間に合わず脳梗塞を発症してしまうケースも少なくないのが現状。心房細動由来の脳梗塞患者は年間3万人ほどいるものの、そのうちの2.4万人は「心房細動が発見できれば脳梗塞を予防できた」とも言われている。
前提として心房細動にはたまにしか症状が起きない「発作性」と継続して症状の出る「慢性」がある。厄介なのは前者の発作性だ。
症状が起きていないときにいくら病院で診断しても発見するのが極めて難しい。患者からすれば発作が起きた時には違和感を感じるものの、診断時には症状が出ていないために医師から「問題なさそうなので、もう少し様子を見てみよう」と言われてしまう。
24時間に渡って心電図を測定できるホルター心電計やパッチ型心電計などを使えば異常に気づける可能性も高くなるが、導入しているクリニックは珍しい。心臓専門医がいないクリニックでは心房細動を診断すること自体が困難なため、ハイスペックな心電計を導入する理由がないからだ。そのため、結果として早期発見が遅れてしまう。
クリニック側では判断のしようがない場合に専門医を紹介することもあるが、専門医側も多忙で何件も検査を受け入れられる状態ではないことが多い。このように患者、非専門医、専門医のそれぞれがペインを抱えているような状況なのだという。
それならば、テクノロジーを活用して心房細動を見つけやすくする仕組みがあればいいのではないか──。それがカルディオインテリジェンスのアプローチだ。
同社では創業以来、心電計と自動診断支援AIを組み合わせることによって「従来見つけられなかった心房細動を特定する」技術の研究開発を進めてきた。
AIの診断根拠を示せなければ現場では使えない
カルディオインテリジェンスでは主に2つの技術の研究開発に取り組んでいて、今後順々に実用化することを目指している。1つが診断の根拠を可視化する「説明可能AI」。そしてもう1つが非発作時でも心房細動を見つけられる「隠れ心房細動診断支援AI」だ。
説明可能AIを搭載したプロダクトは、クリニックなどで働く“非専門医”が主なターゲットユーザー。患者の心電図データをシステムにアップロードすれば、早ければ数分以内で心房細動の兆候がないかを自動でチェックする(結果を返す時間はデータ量に応じて変わる)。