現在開発中ではあるが、具体的には以下の3ステップで結果を表示する予定だという。

第1ステップ:心房細動が発生している波形区間を高精度に特定し時系列で表示し、心房細動が発生している時間帯を可視化
第2ステップ:心房細動区間の一時点を選択すると心房細動部位の波形を表示
第3ステップ:心房細動の波形上にAIが着目した特徴部位を強調表示

田村氏の話では約2000人分の心電図データを用いてアルゴリズムの研究開発を進めてきた結果、正答率は97%まで上がってきているそう。単に心房細動かどうかだけでなく、心房細動だと判断した場合には根拠として「AIが着目した特徴」を赤色で示すのがポイントだ。

「医師が実際に現場で使うことを考えると、なぜAIがそのような判断をしたのかが明らかでなければ、いくら精度が高いと言われても自信を持って患者に説明するのは難しいです。非専門医といっても疾患の特徴などは知っていることも多いので、それを裏付けるような形でシステム側が根拠とともに診断結果を示せれば、非専門医でも安心して使えるのではないかと考えています」(田村氏)

非専門医でも心房細動をスクリーニングできるような仕組みができれば、心房細動に早い段階で気づける可能性も高まる。

長時間心電図を測定するためのパッチ型心電計やなどを組み合わせることで、仮に診断時以外に発作が起こった場合でもその兆候を捕らえられるかもしれない。今まではそもそもパッチ型心電計を導入するメリットのなかったクリニックでも、カルディオインテリジェンスのプロダクトと併用すれば自院で検査できるようになるため心電計自体の普及も見込めるという。

「今までは『うちではわからないから、専門の先生のところに行ってください』と言うことしかできなかったクリニックも多い。そこをシステムがサポートすることによって、『最初のスクリーニング検査ならうちでもできますよ』と言えるように変えていくのが目標です」(田村氏)

実際にパッチ型心電計などを導入していないクリニックの開業医数十人にヒアリングをしたところ、約70%の医師が「(説明可能なAI診断支援システムがあるなら)心電計と合わせて導入したい」と答えたそう。同社のプロダクトは特定の機器に依存しないため、汎用的に使えるのも特徴だ。

非発作時のデータから「隠れ心房細動」検知へ

 

カルディオインテリジェンスが研究開発を進める「隠れ心房細動診断支援AI」。発作がない時でも診断予測ができるのが最大の特徴だ
カルディオインテリジェンスが研究開発を進める「隠れ心房細動診断支援AI」。発作がない時でも診断予測ができるのが最大の特徴だ

この説明可能AIに加えて、非発作時の心電図データから特徴量を抽出し、心房細動の発作を予測するAIの開発も進めている。これまでは見つけられなかった「隠れ心房細動」をディープラーニングを活用して検知する仕組みだ。