「グッドパッチは、事業と組織をデザインする会社です。それはソフトウェアのUI/UXに限らず、ユーザーの課題解決、コアニーズ体験価値の最大化、デザイン組織の支援なども含まれています。さらに広げると、企業価値の最大化にも、デザインという手法を用いて取り組みます。これは、今でこそDXと呼ばれている領域です。僕らの場合、単にシステム化するのではなく、より本質的に企業を取り巻くステークホルダーや社員、ユーザーをデザインしていくことになります。

そういう意味では、コンサルティングファームやSIerと近しい事業ですが、僕らが目指すマーケットは顕在化している範囲より大きいと思っています」(土屋氏)

グッドパッチが掲げる「デザイン」という言葉には、「企業価値のデザイン」という意味が含まれている。それは、土屋氏自身が痛いほど組織の重要性を知ったからだ。

「組織が良くなったことで、明らかに業績も上がりました。組織内に共通言語を持てば、企業価値を上げられる。そうすると、サービス価値も上がる。僕らがサービスに関わりながら組織課題も解決しようとするのは、そのためです」(土屋氏)

「ただし」と続ける土屋氏。

「上場前からそうであったように、グッドパッチは今いる社員たちでつくりあげていくものです。そこに共感する方に、株主になっていただきたいと思っています。『内向きな発言ばかりでどうなんだ?』と言われそうですが、身内が共感していないことを広げることはできません。そこはブラさずに、ミッションである『デザインの力を証明する』を目指すのが、僕らのやり方です」(土屋氏)

今は「デザインの力」を証明するスタートライン

上場後は新しい取り組みも進めている。10月にはスタートアップへの出資からデザイン支援までを行う「Goodpatch  Design Fund」を設立した。ただし、スタートアップへの出資自体はこれが初めてではない。2015年には FiNC Technologies、2020年にはビットキー、それぞれのスタートアップに出資をしている。

「新しい事業を創出し、急成長する必要のあるスタートアップには、ユーザーが使い続けたくなる体験をデザインすることが重要であり、また他社との差別化の要素になります。僕らも多くのスタートアップへのデザイン支援をしてきましたが、その中で6社のスタートアップが上場しています。このファンドを通じて、これまで以上デザインの力で事業の成長を推進していきたいと考えています」(土屋氏)