今後、ANOBAKAはシード期のスタートアップを対象としたVCの運営を通して、より積極的に投資活動を行っていくとともに、投資の枠を超えた取り組みにも挑戦していく。

なぜ、KVPはMBOを実施、独立しようと思ったのか。「上場企業の傘下ではVCとして限界があると感じていた」という長野氏の考えを聞いた。

CVCの「KLab Ventures」で感じた“悔しい思い”

長野氏がベンチャーキャピタリストとしてのキャリアをスタートさせたのは今から9年前、2011年にさかのぼる。KLabがSBIインベストメントと共同でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の「KLab Ventures」を設立したことがきっかけだ。

KLab Venturesの立ち上げに携わった後、取締役に就任。その後、2012年4月には代表取締役社長となり、合計17社のベンチャーへの投資を実行した長野氏だが、その一方で他社と共同で運営するCVCのスキームに課題を感じていた。

「KLabとSBIインベストメントの両社の担当者が合意しなければ投資を実行できない。最近上場したスタートアップ、これまでに大企業がM&Aしたスタートアップにも投資できる機会があったのですが、投資委員会で却下されることも多くありました。それがすごく悔しくて……。このスキームでは絶対にVCとしてパフォーマンスを発揮できないと思ったので、違う形を模索することにしたんです」(長野氏)

KLab Venturesは17社の投資先のうち3社が買収によってイグジットするなど、着実に実績が出はじめていた。SBIインベストメントからは次のファンド組成の提案もあったそうだが、結局それは実現せず、ファンド規模を縮小させることでKLab Venturesの運営は終了した。

きちんとパフォーマンスを発揮できるVCをつくりたい──そう思った長野氏は独立の道も考えたが、まずはKLab取締役会長の真田氏に相談することにした。

「新卒でKLabに入社し、ずっと真田のお世話になっていたので、まず変な辞め方はしたくないと思っていました。そして個人的にもKLab Venturesはあまり手応えを感じていなかったので、真田と話した結果、子会社を設立することになったんです」(長野氏)

こうして2015年10月に生まれたのがKVP(当時の社名はKLab Venture Partners。2020年4月に社名をKVPに変更している)だ。KVPはKLabと、長野氏がプライベートで立ち上げたLLP(有限責任事業組合)が共同でGP(無限責任組合員)を務めるスキームにし、ファンド組成にあたってLP(有限責任組合員)は外部から集め、投資に関する意思決定もLLPが行うという「半独立・半CVC」という珍しい形でスタートを切った。