「KVPはゲーム領域に投資するVCですよね?」という一言

KLab傘下でそれなりに実績を出す見込みが立っているKVPだが、「限界があると思っていた」とはどういう意味なのか。長野氏はこう続ける。

「KVPは自由に事業をやらせてもらっていて、日々の投資活動における制限もあまりありませんでした。ただ、上場企業のCVCの場合、ファンドが上場企業の決算に連結されてしまうんです。17億円規模の1号ファンドはだったので親会社への影響が低く、連結から外れていましたが、30億円規模の2号ファンドは監査法人から『影響あり』と見られて、連結に組み込まれました。その結果、何が起こったか」

「四半期ごとにすべての投資先を監査法人にチェックされるようになったんです。実際、監査に対応したのですが、すごく大変でした。KVPはシード特化で分散投資のスタイルなので、どうしても投資先が増えてしまう。これをやり続けていくのは正直厳しいと思っていました」(長野氏)

また設立から5年が経ち、社名も変更して、“独立性の高いCVCである“と主張してきたKVPだが、最近でも「KVPは(KLabの本業である)ゲーム領域に投資するVCですよね?」と言われたのだという。すでにさまざまな領域に投資を行っているにも関わらず、社外からの認識は「ゲーム会社ためのCVC」と見られていた。その一言は長野氏にとって、大きなショックを与えた。

「去年からMBOの可能性について悶々と考えていたのですが、MBOが実現できるかが別の話で現実的には厳しいのではないかと思っていました。ただ考えているだけでは何も変わらないので、まずは真田に率直な気持ちをぶつけることにしたんです」(長野氏)

今年の6月、長野氏は真田氏と直接話をする機会をもらい、その場で新しいチャレンジをしたい思いを伝えた。不義理な辞め方はしたくない。だけれども新しいチャレンジしたい。それを応援してほしい──そう真田氏に伝えたところ、二つ返事で「応援するよ」と言われた。

その上で真田氏は「ただ、自分がひとりで決めることではないので自分でKLabの全役員を説得してほしい」と言われ、長野氏は全役員に話をする。結果的に全員から「長野がそこまで言うなら、応援する」という回答を得て、長野氏は独立を決めた。

将来的な「上場」も視野に、新規事業の創出も

KlabからMBOを実施し、独立。ANOBAKAとして新たなスタートを切った(ただしMBO後もKLabは少数株主として残る)。将来的にはANOBAKAの上場を視野に入れながら、既存のVC業はもちろんのこと、新たな事業の創出にも取り組んでいく。