KVPでの5年、ファンドを成功させる自信がついてきた

ファンド運営者であるVC(ここではKVP)と、ファンドの資金提供者である事業会社(ここではKLab)で組成する“二人組合”であれば、すぐにファンドを組成できたが、KVPは外部からLPを集める必要があった。そのため、ファンドの組成には半年ほどかかったものの、2016年4月には17億円規模の1号ファンドを組成し、運用を開始した。それまでの間は企業向けのコンサルティングで日銭を稼ぎながら、LP集めに奔走していたという。

その後、2018年10月に30億円規模の2号ファンドを組成。1号ファンドでは約50社、2号ファンドでは約30社に投資するなど、この5年で約80社への投資を実行している。すでに投資先のうち以下の6社については、上場も視野に入った状態だという。

・配送マッチングプラットフォームを手がける「CBcloud(シービークラウド)」
・ピルのオンライン診察サービスを手がける「ネクストイノベーション」
・建設業の人材マッチングサービスを手がける「助太刀」
・コスメショッピングアプリを手がける「NOIN(ノイン)」
・学習塾向けの業務管理アプリを手がける「POPER(ポパー)」
・花のサブスクリプションサービスを手がける「Crunch Style(クランチスタイル)」

特にCBcloudとネクストイノベーションは「ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の未上場企業のこと)超えを目指せる」(長野氏)とのことで、この6社が上場するだけでも、1号ファンドのマルチプル(投資回収率)は約8倍になるとのこと。

“将来有望な、起業したての人に投資するシード特化のVC”という立ち位置を築き、成功可能性が高い企業には投資額を大きくするなどバランスをとる──これによって、長野氏はKVPが高いパフォーマンスを出せるVCであるという確信を持つようになった。

「KVPは週に1回の勉強会で各VCのポートフォリオをもとに、どれくらいのパフォーマンスを出せそうか分析しているんです。毎週、他社を分析しているからこそ、自社がどれだけのパフォーマンスを出せるかはよくわかります。それでVCとしてファンドを成功させる自信がついてきたんです。それと同時に2号ファンド、3号ファンド……とファンドを組成してVC業だけを続けているだけでいいのか。色々考えるうちに、もっと新しいことにチャレンジしたいと思うようになり、それならKLabという上場企業の傘下では限界があると思いました」(長野氏)