こうしたツールの誕生によって、個人のクリエイターがP2C(Person to Consumer)ブランドを立ち上げて、さまざまなプラットフォームにコンテンツを配信し、マネタイズまでする動きが非常に活発になりました。
個人のクリエイターが立ち上げたブランドは既存のD2Cブランドを置き換えていく驚異的な存在だと思っています。今だとステッカーやTシャツなどを販売するグッズやアパレル系のブランドが多いのですが、直近ですと飲料系の領域にも参入してきています。例えば、Emma Chamberlain(エマ・チェンバレン)はコーヒーのブランド「Chamberlain Coffee」を立ち上げました。
P2Cブランドは今後、ソフトウェア領域にも続々と参入してくるでしょう。実際、フィンテック領域では、Charli D'Amelio(チャーリー・ダミリオ)がStepというフィンテック企業に投資し、アンバサダーとして参加しています。これからは、ソフトウェア企業もクリエイターを活用しなければならない時代になっていくのだと思います。
直近ですと、ユーチューバーのDavid Dobrik(デビッド・ドブリック)がSNSアプリの「Dispo」を開発して約4億円を調達しました。彼自身はアドバイザーという立場ですが、CEOを置いて会社を運営し、著名なVCから資金を調達しています。
MrBeast(ミスター・ビースト)も「Finger on the App」というゲームを開発し、数百万ものプレイヤーによる同時アクセスを達成しました。彼らはオーディエンスという非常に強い力を持っています。膨大な数のオーディエンスを抱える彼らが今後、どう動いていくのかは要注目です。
先ほどお話したとおり、クリエイターが自分たちのコンテンツを配信するためのプラットフォームが揃い、彼らは起業する年齢になりました。そして彼らの世代はたとえコードが書けなくても、ノーコードやローコードのツールが誕生したことで、さまざまなコンテンツを開発することが可能です。
動画コンテンツ制作ですと、YouTubeではパソコンでの編集が必要でしたが、TikTokを使えばスマートフォンで動画が制作できます。ゲームの開発であれば「Roblox」で完結します。ニュースレター配信ではSubstackを活用できます。
Z世代はネット上での自己表現に抵抗がありません。むしろ、10歳くらいから自らのオンライン上での存在感を意識するようになります。ミレニアル世代は「とりあえずオンライン上でコンテンツを作ろう」という世代でしたが、Z世代はより戦略的に考えています。