こうして、豚組しゃぶ庵はECでにリニューアルするだけでなく、新たな時代に適応するための実験の場「β版」として2020年12月4日に再スタートを切った。では、これまでの豚組しゃぶ庵とは何が違うのか? まず、以前までの豚組しゃぶ庵は、個室と大広間で構成されていた。今回は店舗面積を半分に縮小して個室のみとし、完全オンライン予約・丸1日個室貸し切り制に変更。なかでも特筆すべきは、予約時に席(個室)の指定ができることだ。
「コロナ禍では、『混雑状況=感染リスクに直結している』と感じる人は多いです。お客さまにとって、周りの席と近いところで食事をするには抵抗がある。だからこそ席状況を確認でき、かつどこに座るのかを決められるのは重要だと考えました。たとえば映画館が元気を取り戻したのは、オンラインで『自由に席を選べる』形式での予約ができるようになってから。この新しい体験によってお客さまの満足度や体験が向上するならばと、豚組しゃぶ庵βでも取り入れることにしました」(中村氏)
席を選べる予約システムは、トレタが開発しているものを採用した。トレタでは現在新しいアーキテクチャーの予約システムを開発しており、それを先行導入したかたちになる。
加えて、同時多発的に立ち上げていた新規事業2つも導入していく。1つは現時点で非公開ということだったが、そのもう1つが、モバイルオーダーのサービスだ。豚組しゃぶ庵で導入する以外にも、よなよなビアワークス新宿ほか、大手飲食店で試験導入されている。
「トレタは、配席業務のコストを下げるためにつくったサービス。こういった業務をより最適化することで売上を高められる。その世界線には、トレタの予約台帳が不要になる可能性もあります」
「ですが、オンライン化が進めば人件費も減り、飲食店の固定費を下げられる。お客さんが好きな席を選べるならば、よりよい席に付加価値をつけて、客単価1人あたり1000円程度上げることも可能です。そうすると、P/Lを成立させられる。コロナ禍における7割経済で生き残る手段としても合致しています」(中村氏)
コロナ禍だからできる、店舗での「実験」
取材当日はオープンしてちょうど1週間ほど経っていたが、「まだできていないシステムもあるので、バタバタしています。ですが人件費は間違いなく減りそうです」と中村氏は笑顔を見せた。
「豚組しゃぶ庵βは、完全なR&D(研究開発)の位置づけであり、お客さまの反応は一定の手応えを感じているものの、具体的な目標・予測は定めていません」