それがVRやARが普及していった世界ではどのように変わるのか。アイコンやニックネームと同じような感覚で、誰もが普通にアバターを用いるようになる(人類の総アバター化)というのが荒木氏の見解だ。

「スマホやPCのような2Dの平面スクリーンから1人称視点の3D空間に舞台が変わると、多くの人は『アバターという体』を使ってコミュニケーションを取るようになると考えました。SNSのアイコンなどと同じように、所属するコミュニティや状況によって好きなアバターを使い分けながら、誰もがなりたい自分になって生きていく時代が来るはずだと」(荒木氏)

アバターを使うことが一般的になれば、今のSNSとは一味違った「アバターを前提としたSNS」が必要とされるはず。そんな見立てがあったからこそ、荒木氏はREALITYの立ち上げ前から「アバター人類のためのFacebookのような場所を作る」ことをイメージしていた。

荒木氏自身「VRChat」の世界をユーザーとして体感した時に「今までのインターネットにはない別の空間に入ってしまった感覚」を味わい、大きな衝撃を受けたという
荒木氏自身「VRChat」の世界をユーザーとして体感した時に「今までのインターネットにはない別の空間に入ってしまった感覚」を味わい、大きな衝撃を受けたという。画像はVRChatのスクリーンショット

「誰もがスマホだけでなりたい自分になって、アバターでコミュニケーションできるライブ配信サービス」というアイデアをまとめ、2017年末にグリーの経営会議で経営陣とディスカッションを実施。年末年始で構想をブラッシュアップし、年明け早々にはメンバーを集めてキックオフを行った。

2018年4月にはWright Flyer Live Entertainment(現・REALITY)という社名で正式に会社としてスタート。同月にグリーが公にした「バーチャルYouTuberを中心としたライブエンターテインメント事業を立ち上げ、1〜2年で約100億円規模の投資を行う」という計画は、大きな話題を呼んだ。

“スマホだけで”アバターコミュニケーションができることが重要

REALITYは2018年8月、VTuberの配信を楽しめる視聴用アプリとしてスタートした
REALITYは2018年8月、VTuberの配信を楽しめる視聴用アプリとしてスタートした

サービスの開発にあたっては、最初から“スマホだけ”でアバターを作ってコミュニケーションが成立するコミュニティを作ることを決めていた。

2018年に入ってアバターを手軽に作成できる仕組みやアバターでライブ配信ができるサービスがいくつか出てきたが、その多くは「PCベースで、リアルタイムモーションキャプチャーがあって、アバターが人の動きに連動して動くタイプ」のもの。それがバーチャルSNSという認識だった。

5年後10年後にはデバイスが普及してそのような流れが主流になるかもしれないが、少なくとも来年ではない。グリーでVR事業の立ち上げに携わりデバイスの普及が簡単ではないことを実感していたからこそ、荒木氏はそのように感じていたという。