同時にUXの観点から“アバターは自分自身である”という認識を持ってもらえるような設計を意識したという。世の中にある多くのアバターは荒木氏いわく「着せ替え人形アプリ」であり、アバターの服を着せ替えたり、ポーズを取らせたりする。これでは自分という認識を持ちづらいと荒木氏は話す。

「REALITYで大事にしているのが、アバターが勝手に動かないということです。全画面に表示されるアバターが自分の動作に合わせて『手鏡』のように動く様子を見ていると、だんだんとこれが自分であるという感覚が芽生えていく。これが勝手に動いたり、踊ったりしてしまった途端に自分ではなくなってしまいます」(荒木氏)

REALITYのゲームは、見ている人もゲーム体験の一部

サービスローンチの翌年、コミュニケーションを加速させるための新要素としてREALITYに追加されたゲーム機能においても同様にいくつかのこだわりがある。中でも興味深いのが、荒木氏の「クラウドゲーム」の捉え方だ。

「僕の中では『本当のクラウドゲームはこれなんじゃないか』という感覚でREALITYの中のゲームを作っています。というのは、今クラウドゲームと呼ばれているものの多くは流通手法と課金方法のイノベーションだと思っているんですね。以前であればお店で買っていたり、ダウンロードして遊んでいたりしたものを、オンデマンドでサブスク型に変えた。そこにはゲームそのもののイノベーションは入っていないという認識です」

「ではクラウドゲームの本当の価値とはなんなのか。それは見ている人もゲーム体験の一部になっていることだと思うんです。今までのゲームでは『ゲームを遊ぶこと』『ゲームを楽しんでいる状態を実況すること』『その実況を見ること』が完全に分離されてしまっていました」(荒木氏)

REALITYで提供されているゲームは全てのプレイが配信される。1人だけで遊んで完結するのではなく、ゲームを楽しむ様子がパブリックになっているのだ。

その上で、視聴しているユーザーが“ゲームに関与できる”ように設計されている。具体的にはコメントで配信者にアドバイスや声援を送ったり、ギフトを通じてゲーム内にアイテムを届けたりすることで、ゲームに介入することが可能だ。

「あともう一歩でクリアできるんだけど」というタイミングで視聴者がアイテムを提供し、アシストをする。それに対して配信者から「○○さん、ありがとう!」といったようなコミュニケーションが生まれる。そのような例も珍しくない。