もともと近澤氏はディー・エヌ・エーやシンガポールのViki、米国のスタートアップなど複数社で、10年以上にわたりエンジニアとしてソフトウェア開発に携わってきた。世界中で使われるようなプロダクトを作りたいという思いが強く、サンフランシスコでAutifyを立ち上げた後も翻訳系のサービスなど複数の事業にチャレンジしたが、望むような成果を出せずにいたという。

近澤氏にとって転機となったのが、2018年に米国の著名アクセラレータープログラム「Alchemist Acceralator」に合格したこと。このプログラムはBtoBスタートアップに特化していることもあり、市場の成長が期待されるテスト自動化領域で勝負することを決めた。

とはいえ、すぐに現在のAutifyのアイデアが生まれたわけではなかった。最初の3カ月は別のプロダクトを開発していたが、100社に営業をしても一向に売れない状態が続く。このままではプログラムも卒業できないかもしれない。焦った近澤氏は、商談時のヒアリング内容をまとめていたノートに答えを求めた。

顧客の悩みのタネになっている課題を抽出し、表にまとめ、言及される回数が多いものから並び替えてみる。すると、近澤氏はあることに気づく。8割以上の会社が同様の課題を感じていたのだ。

それこそがAutifyが解決しようとしている「自動化を担うエンジニアの不足」と「自動化に伴うメンテナンスコスト」だった。

課題を整理していたAirtableの表
課題を整理するために作成した表

解決策として近澤氏はAutifyの原案となるサービスを考え、プレゼン資料を練り直すと共に、まずは簡単な紙芝居のデモアプリを作って動画に収めた。これを持って翌日の営業にいくと、担当者は今までと打って変わった反応で、即決で「買います」と言われたという。実際に動くプロダクトがまだなかったのにも関わらずだ。

「スタートアップの失敗の原因としてありがちなのが、ソリューションから入ってしまうこと。自分たち自身も過去の事業を振り返ると、顧客の課題が深掘りできる前にソリューションを作り始めてしまっていました。いざ作ってから売りに行っても、全く売れない。そもそも作るところから始めること自体が間違っていたんです」

「BtoBのプロダクトであれば、スタートアップを始めて最初に注力すべきなのはコードを書くことではなく、お客さんのところに行ってバーニングニーズを特定することです。それが1番のキモであると同時に、時間もかかるし苦しい。作ることの方が楽しいのでついつい逃げてしまいがちですが、バーニングニーズを見つけられたことが過去の事業との最大の違いでした」(近澤氏)