その原因の1つとして、多くの場合に「間取りの作成を建築家やデザイナーが担っていないことがある」と森下氏は話す。建築家が間取り図を作成するのは注文住宅全体の約4%ほどにすぎず、残りの96%を担うのはハウスメーカーや工務店だ。

後者では設計のプロではない営業担当者が間取り図を作成することが多いため、どうしてもパターン化したものが提案されやすく、品質にもばらつきが生じる。実際に森下氏がmadreeを立ち上げるきっかけになったのも、「ハウスメーカーで作ってもらった間取りに納得が行かず、建築家にもう一度作り直して欲しい」という依頼が届いたことだった。

madreeはテクノロジーを用いることでこの構造を変え、ユーザーが建築家に直接アクセスできる仕組みを作っているのがポイントだ。

madreeのサービスイメージ
 

同サービスでは入力フォームに沿って希望する条件や要望を記入すると、その依頼に合った間取りをオンライン上で建築家に提案してもらえる。

1案のみのライトプランは1万5000円、複数案から気に入った間取りを選べるスタンダードプランは4万5000円。madreeは200社以上の住宅会社と提携しているため、気に入った間取りについては提携住宅会社へ概算見積を依頼することも可能だ。

登録ユーザーの多くは1〜2年以内に家を建てる構想があり、そのための間取りを検討するべくmadreeに訪れているそう。約8割が女性で、特に家事導線にこだわりたいという要望が多いという。

実際の間取りのイメージ
実際の間取りのイメージ

スタジオアンビルトは2013年に森下氏と取締役の山川紋氏が立ち上げたスタートアップだ。一級建築士の資格を持つ森下氏は大成建設にてオフィスビルや大規模複合施設などの設計に従事した後、ECサイトの運営なども経験。一方の山川氏もリクルートを経て自ら設計事務所を立ち上げ、住宅の設計やリノベーションに携わってきた。

創業時に考えていたのは、ITを活用して建築家が仕事をシェアできる仕組みを作れれば「より柔軟な働き方や時間の使い方を選べるようになるのではないか」ということ

うまくいけば建築家たちがクリエイティブな業務により多くの時間を費やすことや、子育てと両立しながら仕事を続けることもできるかもしれない。そのようなアイデアから建築専門のクラウドソーシングサービス「STUDIO UNBUILT」を開発した。

同サービスには現在建築家やデザイナーなど7000人を超える人材が登録。madreeではここに集結する専門家に間取りの依頼をできる仕組みになっている。