なおFinatextの成り立ちや、同社のビジネスにも関わる「Embedded Finance(エンベデッド・ファイナンス)」については過去に詳しく紹介している。これらの記事も合わせて読んでいただくと、さらに理解が深まるはずだ。
金融領域における2つのトレンド
「大手金融機関によるデジタルブランドの立ち上げ」と「非金融系の事業会社による金融サービスの参入」──。林氏は近年の金融業界における大きな変化として、この2つを挙げる。
ふくおかフィナンシャルグループの子会社・みんなの銀行は、大手金融機関のデジタルブランドのわかりやすい事例だ。“国内初のデジタルバンク”をうたう同社では、5月にデジタルネイティブ世代を主なターゲットとするスマホ完結型の金融サービスをローンチ。並行して法人向けのBaaS(Banking as a Service)事業も手がける。
このような動きはグローバルでも盛んになっており、ゴールドマン・サックスが数年前からデジタル銀行「Marcus(マーカス)」を展開。JPモルガンも2021年9月より英国で「Chase(チェース)」ブランドのデジタルバンクを始めた。
もう1つのトレンドとして、別の領域で事業を展開していた企業が金融サービスに参入する流れも加速している。海外ではUberやGrabなど大手ライドシェアサービス事業者が、次の一手として金融サービスに進出。Appleやウォルマートなど、各業界をけんいんするプレーヤーも決済や送金などにまつわるサービスを手掛ける。
日本ではLINEが証券や決済、保険、資産運用などすでに複数のサービスを運営しており、メルカリもメルペイを介して、この分野に事業領域を拡張している。
最近は非金融系の事業者が“既存のサービスに組み込むかたち”で金融サービスを提供することを指す、「Embedded Finance」というキーワードを目にする機会も増えてきた。
林氏によると、特に大手金融機関がデジタルブランドを立ち上げる流れは顕著で「明確にニーズがあり、不可避なトレンド」だ。実際に事業者と話をする中でもその潮目が変わってきていることを実感しているという。
一方で非金融系の事業会社による金融サービスの参入に関しては、市場は大きいものの現時点では大きな成功事例が少ないこともあり「どこまで広がるかは未知数な部分もある」と話す。
ただ「本業の接着剤としての金融」や「本業の利用率を良くするための金融」といった考え方が事業者の間でも徐々に広がり始めていることから、さまざまなプレーヤーが金融サービス“も”手がける事例は、今後さらに広がっていくのではないかというのが林氏の見立てだ。