中国で農業が発展しない
中国経済の中で、一番基礎が弱いのが農業だ。毛沢東時代には、山西省の大寨という村が農業における全国のモデルに持ち上げられたが、文革時代終了後、大寨もひっそりとした存在になった。いまの中国の若者はおそらく大寨という固有名詞を聞いても、何のことかも分からない。
1978年から改革・開放路線が始まると、貧しい存在だった農村が変化し始めた。一部の村が豊かになり、脚光を浴びる存在となった。江蘇省の華西村、長江村、河南省の南街村、山東省の西霞口村、南山村などがその代表例だ。しかし、そのどれを見ても、農林業をベースにして経済的発展と飛躍を実現した村ではない。
例えば、村民にボーナスを黄金と白銀で支給した長江村は、2010年の時点で村営企業が、港湾、物流、鉄鋼、化学、不動産、機械電機製造など8分野・48の企業を管轄し、純資産を30数年間で400万倍に増やしてきた。
しかし、これらの発展は疲弊した中国農村全体の改善にはつながらなかった。農村の若者たちは、田舎を離れ、沿海部や都市部に出稼ぎに行ってしまったからだ。
かつて日本を悩ませた「三ちゃん農業問題(働き手の若い男性が出稼ぎに出て、その妻や高齢の男女などが農業をするという1960年代頃の言葉)」が、今、中国の農村を苦悩させている。