問題を抱えて1人で悩んでいる部下がいます。上司としては自分に相談してほしいのに、彼はなかなかあなたに近づいてきません。そんな時、あなたならどうしますか。
例えば、新人の部下が担当する取引先との交渉がうまくいっていない場合、どんなふうに声をかけたらいいでしょうか。
こんな場合に、上司が「うまくいっていないのは、どこが問題だと思う?」とか「相手の意見をちゃんと聞いているのか?」といった、「うまくいかない理由を探す」質問をしても効果はありません。それどころか、部下は上司の質問を鬱陶しいと感じることさえあるでしょう。
なぜなら、そうした場合、部下は「うまくいかないのは自分の力が足りないせいだ」と考えているケースが多いからです。そう考えてしまうと、誰にも相談できず、まるで自分で自分を縛るようにどんどん自分を追いつめています。そんな時に、「うまくいかない理由」を考えさせても部下はますます追いつめられていくだけです。
そうした部下には視点を変えてあげる質問が効果を発揮するのです。
「もし君がぼくだったら、どうすると思う?」
「君が目標とする営業マンをイメージしてみて、その人ならこんなときどう考えるかな?」
「3年後の君なら、いまの君になんていうと思う?」
自分を他の人と立場を入れ替えてみる、将来の自分を考えてみる、成功したイメージを考えてみる……、こうした視点からの質問はきっと部下に新鮮な気づきを与えるでしょう。
アインシュタインは相対性理論をすべて自分の頭のなかだけで考えたのでしょうか。本田宗一郎氏はすばらしい車を独力でつくり出したのでしょうか。そこにはいつも彼らに興味と関心を持つ弟子や仲間がいて、対話があったそうです。対話を広げるために彼らの間でくり返されたブレストのきっかけは、いつも新しい切り口の質問だったと言います。
部下に新しい切り口を気づかせる質問ができれば、上司にも部下との新たなコミュニケーションが広がっていきます。